童話 ニエの毒姫の物語R2
仲仁へび(旧:離久)
第1話
ニエ=ファンデ。
毒に満ちた世界に、一人の女がいた。
女は、その世界に存在するたった一人の生物だ。
毒の中でも生き続ける事ができる。
けれど、他にそんな人間はいないから。
だから、孤独という感情に苦しんでいた。
そのため、孤独に耐えられなかった毒姫は、誰かと触れ合うべく、人形作りを始めた。
始めは拙かったその作業は、徐々に人間を成すまでに近づき、最終的には実物そっくりになっていった。
出来上がったその人形は、少女の形となる。
毒姫は、その人形にクロアディールと名付け、可愛がった。
作られたクロアディールは、プログラムに従い、毒姫を愛し、慕った。
それはプログラムしかない言動だったが。
長い時間一人きりだった毒姫は、それでも幸せだった。
しかし、毒の世界はその人形を蝕んでいく。
無機物でさえも、侵食し、毒そうとした。
これ以上その世界にいては、クロアディールが壊れてしまう。
そう思った毒姫は、そのクロアディールを別の世界へ移動させる事にした。
娘同然に思っていたクロアディールとの、別れの時がやってくる。
毒姫は、再び長い間孤独な時を過ごす事になるが、繋いだその娘の手を離す事にした。
我が子の幸せを願わない母親など、存在しない。
それは毒姫も例外ではない。
そう思って。
毒姫はそれから人形を作る事はなくなった。
幸福だった思い出を胸に宿して、ただ孤独な世界で生き続けている。
童話 ニエの毒姫の物語R2 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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