12月5日 16:18 組み合わせ抽選会
水曜日、本来の日程からは二週間遅く、高校サッカーの抽選会が行われた。
埼玉県熊谷市にある武州総合の部室でも、仁紫監督とチームキャプテンの紺谷以外の全員がインターネットTVで様子を見守っている。
今回の選手権は四強という評価だ。
大本命として高踏高校があげられており、対抗馬が前年度覇者の北日本短大付属。そこにインターハイ王者の武州総合と洛東平安が続いている。
何といっても、U17ワールドカップを制してきたメンバーがいるし、しかも、4校とも県予選は代表メンバー抜きで勝ちあがっている。
一発勝負のトーナメント戦であるので予想外の高校の躍進……それこそ昨年の高踏高校のような、もありうるが、現実的にはこの4チーム以外は厳しいだろうという評価だ。
その中で北日本短大付属、洛東平安、高踏は前回準決勝まで進出しているため、シードされて準決勝までは当たることがない。
具体的には仮に四強に入ったシードチームが全て勝ち進んだ場合、準決勝は北日本短大付属と浜松学園、洛東平安と高踏という対戦になる。
武州総合はシードから外れているが、逆に言うと、このチームがどの山に入るかが抽選会の大きな焦点となる。極論すれば、二回戦で洛東平安対武州総合のような試合もありうるからだ。
高校サッカーの抽選は色々と制約がある。
2チームある東京代表は決勝までは対戦しない。また、開催権をもつチームと開幕戦を戦うチームに分けられる。
東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏4チームの代表は準決勝までは対戦しない。
一回戦は必ず東西同士の対戦となるが、三重県と東海地域の対戦はない。
といった具合だ。
従って、まずは制約をもつチームから抽選を行う。
のであるが、その前に肩透かしを食らわすべく、大会サポーターと大会マネージャーが出て来て、話を始めた。
「大会サポーターは吉田充啓さんか」
それでも武州総合のメンバーは吉田の話には耳を傾ける。現在SC東京でプレーしているが、埼玉の本庄市出身なので武州総合のメンバーには地元に近い人という存在だ。
やはり、直前のワールドカップで優勝したこと、その中に18人の参加選手がいるということが強調されている。
『これまでで一番レベルの高い大会となりますか?』
という司会の煽りめいた質問に、「もちろんです。世界王者がいる大会なんですから」と真顔で答えている。
吉田が話をした後、大会マネージャーとして菱山佑里香が出て来た。紹介がなされ、本人の意気込みが語られる間に恒例のリフティングのビデオも出て来るが。
「下手すぎる……」
ボールの扱い方を明らかに分からないという様子で、1回以上できそうにない。
「まあ、でも、実際は分からんけどな。去年の佐久間サラは最初100回以上やったけど、周りがドン引きしてやり直しさせて5回になったって話だし」
「そうなん?」
「最初の映像がネットに出たんだって」
そんな話をしているうちに抽選に入った。
まずトップバッターとなったのは千葉の弘陽学館だ。
「お~、洛東平安のところか」
ということは、武州総合は洛東平安と同じ山には入らないことになる。
続いて東京代表の
「よっしゃ!」
古郡が声をあげた。
この時点で残った武州総合は高踏のグループに入る。
山としてはもっとも険しい、という事前評判になるだろうが、実際どことやりたいかというとほぼ全員、高踏とやりたいと思っていた。
インターハイでのもやもやした部分を晴らしたいという思いもあるし、単純に一番強いところとやりたいという思いもある。
あとは、どのタイミングで対戦するか。
『武州総合、33番』
入った場所は高踏とはもちろん同じグループだが、大分離れている。
「ベスト8まで対戦はなしか」
「ま、今回は我々の方が一試合多いので良いのでは?」
高幡と楠原が淡々と話す。
武州総合は一回戦からの登場となるので、二回戦から出て来る高踏よりは一試合多く戦うことになる。
ただし、インターハイでは武州総合の方が二試合少なかった。これで多少つり合いが取れるようになったとも取れるだろう。
その後、東海地域も終わり、通常の抽選へと移行する。
そのトップバッターである兵庫代表の神戸海洋高校が26番、高踏の隣を引いた。
『神戸海洋高校、初戦は優勝候補の高踏高校との対戦です』
選手と監督が映し出される。どちらも「あちゃ~」という顔をした後、「でも、どうせならこのくらいの相手とやる方がいいか」という雰囲気のいい顔だ。
武州総合の対戦相手は大阪代表の海老塚高校となった。
「あのデカイイケイケのところか」
「それは去年で、今年もデカイかは分からんぞ」
抽選が終わり、組合せも決まった。
開幕まであと三週間と少し、最後の仕上げをする期間だ。
ややこしすぎる抽選手順:https://kakuyomu.jp/users/kawanohate/news/16818093085778982224
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