第5話 ーエピローグー
「いやー、驚きましたよ。まさか校長先生から『教師を追い出してほしい』なんて依頼を受けるとは思ってもなくてー」
僕は並木先生にネタバレした一ヶ月、校長室に呼び出されていた。
まぁ、取り計らったのは僕なんだけど。
「驚くほどのことでもないでしょう。『公務員』という職種はそれほど縛りが面倒なのですから。様々な現場を回ってる淵上先生ならお分かりでしょう」
辞めさせるというのは職業の都合上難しい。
自主退職なら話がはやい。
それで僕達が頼られたって訳だ。
「並木先生ね。僕は結構良い先生だと思ったんですけど」
「そうでもないですよ。人は自分が思ってる以上に人から見られてますからね」
当て付けのつもりか知らないけど、いいこと言うじゃないか。
「自分の過ちを認めない人間に成長がないことを並木先生は知っていた。誰よりも知っていたからこそ、過ちを過ちとせず、自分を正当化することで正気を保った。ま、その結果正しさに狂って正気を失って、ついでに職も失った、と。彼は自分を無価値な人間だと思い込んでる痛々しい人で、誰よりも人間味があった。友達にはなりたくないですけど、操り易くて丁度よかった」
「淵上先生が仕事をし易かったならば我々としても良かったですよ。彼をターゲットに据えて」
本当に嫌らしいジジイだ。
もう二度と関わりたくない。
さっきからずっと本当の顔が見えない。
正面に座っているのにまだ一つ深い隔たりがあるような感覚。
まぁ、現場の問題に対して僕はどうこう言える立場じゃないし、仕事である以上依頼を終えてお金を貰えばそれまでの関係だ。
……リピートがない限りは。
「それじゃまた依頼があれば何時でもお気軽に。僕達『善悪と倫理の教会』まで」
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