第7話:戦いはまだ続いて行く。

「安羅!!」

「桜井さん」


「大丈夫よ、神童くん・・・黙って見てなさい」


アヴェルアンジェは雄叫びをあげると左腕をかばって後退した。

べリアルは間髪入れずアヴェルに斬りかかってきた。

その攻撃をすばやくかわしながらアヴェルは残った腕でベリアルの左腕の

鋭い剣を手刀で叩き折った。

続けざまに折れたほうの腕を払って、右腕の剣も叩きおった。


武器を折られたベリアルは後退すると、体制を整えて腹に抱えていた

球体をアヴェルめがけて放出した。

アヴェルに向かって飛んだ球体は彼女に激突して一気に破裂した。

何個あったのかは分からないが全部の球体が爆発して、まともに衝撃を

食らったアヴェルは後方に吹き飛ばされた。


「安羅・・・」


「大丈夫よ、アヴェルはそのくらいじゃ倒されないから・・・」

「言ったでしょ、あの子の治癒能力を過小評価しちゃいけないって」


桜井さんが言ったとおり、アヴァルは体制を立て直した。

球体を食らった体は傷だらけになっていたけど、それも急激に再生しつつあった。


「見なさい、神童くん」

「アヴェルの切られた左腕、再生しはじめてるわよ」


本当だった。

アヴェルの左腕は徐々に元の腕に復活しつつあった。


ベリアルはふたたびアヴェルにいどみかかろうと、たくさんの目をギョロギョロ

させながら咆哮をあげた。


左腕が完全に復活したアヴェルは例の両腕を前に出すとベリアルに向かって

指先からビームを放った。


だが今度のベリアルはバリアを張ってアヴェルのビームを跳ね返した。


「桜井さん、あのビーム跳ね返されてますよ」

「あのビームが通用しないとなると打つ手ないんじゃないですか?」


「神童くん、私は君にこれからあの子にもっと驚かされることがあるって

言ったはずよね」

「まあ、見てなさい」


ビームがバリアによって跳ね返されたアヴェルは、余裕で立っているベリアルに

今度は両腕を腰にあてた状態で、何かをつかむような手の格好をした。

そしてやはり背中から発光した光が腕まで移動すると、手の中で回転しながら

エネルギーを溜めて丸い光の玉を形成した。


光の玉が大きくなったと同時にアヴェルは両腕を一気に前に伸ばすと光の玉から

ベリアルめがけてデカいビームを放射した。

ベリアルは、すかさずバリアを張ったが、今回のデカめのビームはバリアを

物ともせずベリアルに向かって放射された。


アヴェルの強烈なビームを食らったベリアルはバリアもろともなすすべもなく

見る間に溶けていった。


今までそこに立っていたベリアルは跡形もなく消えた。


「勝った・・・勝ちましたよ、桜井さん」

「よかった〜・・・もう生きた心地しなかったですよ」


「よかったわね、神童くん」


僕と桜井さんの場所からアヴェルは元の姿、安羅に戻りつつある姿が見えた。

僕たちはすぐに彼女のもとに向かった。


市民は全員避難して誰もいないその場所に、安羅は前のように気絶してないで

息をきらしながら立っていた。


僕と桜井さんは安羅のもとに駆けつけると彼女にすぐに声をかけた。

安羅は振り向いて僕に駆け寄ってきた。


「私、勝ったよ、神童くん」


「ああそ、神童くんがいいのね、私じゃなくて・・・」


「よかった・・・大丈夫?安羅」

「よくやったね・・・偉いよ・・・アヴェル」


「強敵だったわね、安羅」


「桜井さん・・・」


「アヴェルにあの武器を使わせるなんて、これからベリアルも、どんどん強いやつが

現れるかもしれないわね」

「さらに厳しい戦いになるかも・・・」


「桜井さん・・・そんなこと言われると僕不安です」


「事実を述べたまでよ・・・予断できないってこと」

「でもアヴェルはどんな強敵が来ても負けないわよ、神童くん」


「さ、もうここにいる必要もない・・・帰りましょう」


見るとベリアルが立っていた向こうに夕日が沈もうとしていた。


またいつベリアルが現れるかもしれない。

それまで安羅が平和な時は、いつでも僕がそばにいて精神的に彼女を癒して

いかなきゃ。


その後の僕と安羅は切っても切れない仲になっていった。

安羅の心の中に僕に対する愛情が芽生え始めたのはたしかだった。


その後もベリアルは再三に渡って僕たちの世界を脅かして行くが、そのたびに

アヴェルアンジェは敵に果敢に立ち向かってこの世界を守っていくことになる。


いったい何体のベリアルがやってくるのか、戦いはいつまで続くのか・・・。

先はまだ見えないけど、僕と安羅の戦いはこれからも続いていく。


アヴェルアンジェと言う天使に刃向かったベリアルという悪魔は、彼女の手に

よって、そのすべてが混沌の世界へと落とされていくことになる。


END. 第1章終了です。

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レミニセント・アヴェルアンジェ。 猫野 尻尾 @amanotenshi

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