第6話:デートからのアヴェルアンジェ。

アミューズメントパークとは程遠い規模の小ぶりな遊園地。

海水浴場が併設してあって、夏は海の家に家族やカップルで賑わう。


遊園地にはジェットコースターもあるけど、ビビるほどの怖さはない。

おもちゃみたいなジェットコースターに僕らは乗った。

安羅はこんな場所に一度も来たことがなかったんだろう。


楽しいってことを顔と体で表現した。

僕は安羅とあっちこっちの遊具に仲良く乗って楽しんだ。


僕は安羅を知って以来、こんなに笑った安羅を見たのははじめてだった。


ひととおり遊んだ僕たちは遊園地のベンチに腰かけて仲良くソフトクリームを

買って食べた。

ソフトクリームさえ安羅には初めての経験みたいだった。


キューピットと学校との生活の中で、今までは無機質な生活を送っていた安羅・・・僕との出会いで人間らしい感情を持ち始めた。


遊園地で遊んだあと、僕たちは動物園へも行った。

ここでも安羅は見るものすべてが目からウロコ状態だった。

たくさんの動物を見て驚きしかなかったんだろう。

小動物を見て、可愛いとまるで子供のように目を輝かせた。


「だいぶ、日が傾き始めたね・・・そろそろ帰ろうか、安羅」

「うん、今日は楽しかった・・・ありがとう神童くん・・・」


「また来ようね・・・」

「これから、いろんなところに連れてってあげるから・・・」


そういうと安羅は嬉しそうに笑った。

安羅は笑うと可愛いんだ・・・普段から笑えばいいのに、そう思った。


僕たちが動物園から出ようとした、まさにその時だった。


先日学校で起こった時と同じように、空から飛行機でも落ちてきたような

激しい轟音がしてその反動で僕たちのいた場所にも衝撃が走った。


ベリアルだ・・・また、あつらが来たんだ。


園内放送で、お客さん全員に避難勧告がでた。

客の全員が係員の誘導ですみやかに園の外に避難した中で僕と安羅はそこに

残ったまま、見に迫る危機感を感じていた。


「安羅、大丈夫か?」


「神童くん、ごめんね、私行かなきゃ」


「僕は大丈夫だから・・・」


「うん、どこかに避難してて」

「行ってくる」


そういうと安羅はアヴェルアンジェに変身して大空に飛び去って行った。

その光景を心配しながら見ていると、僕のスマホが鳴った。


「桜井さん?」


「神童くん、どうやらデートに邪魔が入ったみたいね」

「今から、神童くんを迎えに行くから・・・」


「分かりました」


ものの5分ほどで、キューピットのRV車が園内に飛び込んできた。


「神童くん乗って」


僕はすぐに助手席に乗り込んだ。


「私以外の連中はすでに戦闘現場に向かってるから」


そういうと桜井さんは車を現場まで大急ぎで走らせた。

警察に捕まっちゃうんじゃないかってくらい飛ばした。


「桜井さん、ちょっとスピード出しすぎじゃないですか?」

「こんなの通常速度でしょ・・・怖いなら降りる神童くん」

「愛しい彼女に早く会いたいでしょ」


「愛しい彼女って・・・」


「あら、違ったかしら」

「それともまだ片思い?」


「安羅からは好きだって言ってもらえましたけど、それはただ友達として好き

ってだけですよ」


「そう、せいぜい頑張りなさい・・・あの子にだって愛って感情はあるのよ

神童くん」

「ほんとは感受性の強い子なのよ、今はそれをうまく表現できないていないだけ」

「勝手に安羅には感情が気薄だって思わないほうがいいわよ」


「分かりました」

「あ、あのあたり・・・土煙があがってます」


そのまま大きな太鼓橋を渡ると、湾岸地帯のビルとビルの間から

アヴェルとベリアルが戦ってる姿が見えた。


今度のベリアルも黒っぽいやつで、この間のやつと違って腕は二本だった。

でも頭がふたつあって、ギョロギョロ動く目がたくさん並んでいた。

そして腹に、小さい球体を無数に抱えていた。

それに尻尾が生えていて、細かい棘がたくさんあってヤスリみたいな尻尾だった。


僕たちは、2体にどんどん近ずいてハッキリその姿が見える場所で車を止めた。

向かいの障害物の少ない湾岸で2体の戦う姿がよく見えた。


するとベリアルの両腕が形を変えて刃物に変わった。

体から二本の刀が生えてるみたいだった。

アヴェルがベリアルにいどみかかろうとした時だった。

ベリアルのその鋭い刃を横になぎ払うと、前に出ていたアヴェルの左腕をスパッと

切り飛ばした。

その切られた腕から、血しぶきが舞った。

アヴェルは悲鳴のような声をあげ、切られた腕と体が小刻み2震えていた。


つづく。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る