第29話 希代的アンコンシャスネス
普通の軍なら百人程度いざ知らず,今回ばかりは相手が悪すぎる.逃げるのは不可能だな.
「行くぞ.悪魔」
「来い」
ノエの推察通り,俺には限界が無い.不老不死,特に不老を定義するとき,老いとは何かを知らなければならない.筋肉が発達することは老いではないとしても,筋肉が落ちることが老いになるなら不老の人間の身体はどこまでも肥大化する.頭脳も同じだ,脳の皺には物理的な限界があるため,記憶や認知能力をどこまでも高めるためには人間の体を捨てなければならない.逆に,鍛え続けさせる事で進化を促すなんて話もあるが,一人の人間には無理な試みだ.俺の場合は意志が強さに直結する.便利な身体だ.
「フゥッッ!」
「おっと,天才と言われるだけあって強いな.ソニアと言ったか?」
「褒め言葉と受け取っておこう.すぐに終わりにしてやる!」
この人数相手に通用するか分からないが,まずは一人目から.
「
「……!? ぬうううあ!!」
「うわわっ.あれ? あんまり効いてない……」
「何だ……? 体が重い,いや,精神的な疲れを引き出されたのか?」
天使の殻を引きはがすには,内側から圧力をかけるのが一番なんだけどな.こいつの場合,そのまま抜けていったような.魂は普通の人間……??
「御姉様に触れるな,悪魔め!!」
「それじゃあ,妹ちゃんで.
「ああああっ…… 甲冑が…… 動けない……」
「貴様ああああああああああああああ!!」
「やべっ」
解説聞いてたのに忘れてた.ソニアってシスコ──
「うぐっ」
「捕まえたぞ.その奇妙な技で何人もの命を奪って来たんだな?」
「命を奪ったのは最初の一人だけさ,まあ殺したという解釈で間違いないが」
「その減らず口もここまでだ.所詮貴様は正義を振りかざして,自身の満足のために人を殺してきたに過ぎない!」
「正義なんてそんなもんだぜ,大事なのは,自分を信じ続けられるかどうかだ」
「なら信じたままでいい.力づくで望みを断ち切ろう」
この円盾,拘束にも使えるのか.……詰んだな.
「
[[取らせないよ.私の大切な──]]
「な,弾かれた?! おい! ノエ!! どうなっている?!」
「予想外でした.ソニアさん,拘束に切り替えましょう」
久しぶりの,何万年と久しい,そんな感覚だ.
[[今度は,久しぶりって言ってもいいよね?]]
そうだな.ずっと居たんだな,俺の中に.
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