第27話 占術的アルキミスタ

 あれから数日,ノエは自身の考えを次から次へと俺に話した.内に抱えていた推論を胸を張って話せる相手ということだろうか.本国では錬金術師という職業で貴族から絶大な支持を得ており,不老不死の研究のために東の国へ渡り陰陽道を知ったそうだ.魂だとか神だとかの話を真面目に聴いてくれる奴なんて限られてるからな.なんだか嬉々として突拍子のないことを話している姿は,あの日最後に話した伊吹いぶきに似ているな.


「天使の力は運命の殻にそっくりなんですよ.時代を超えて循環しているように出現している.しかし,これには僕たちとは別次元の運命に縛られるというほど超次元的なのです.実際に会ったことのある貴方様なら分かりますよね? ね? そう思いませんか?」

「そうだな……」


 本当に似ている.ウザいところも驚くほどに……


「遠征隊について,もう少し詳しい話が聞きたいな」

「あー,そうですねそうですね.主戦力について教えておきましょう」

「待ってました」

「まずは隊長のソニア・デ・リバデネイラ・ビダル.十五歳で軍に入り,僅か二十三歳にして遠征隊の隊長を任された天才です.抜群の判断能力に加え,身体能力も随一.それと重度のシスコンですね」

「最後の何だよ」

「次に隊長の妹セリア・デ・リバデネイラ・ビダル.二人は建国時に戦果を挙げたリバデネイラ家というある程度の身分のある人たちです.セリアさんの方はどちらかと言えば頭脳派ですね.とはいえ実戦経験は少ないのでこれからですね.それと重度のシスコンですね.ソニアさんを揶揄からかったときに凄い睨まれました」

「最後の何だよ.しかも嫌われてるし」

「まあ主要なところですと,後は物資輸送用に道を整備する整備班の班長アルバロ,後方支援をする庶務班の班長クレトくらいでしょうか」

「それで,ノエはどこ担当なんだ?」

「僕は技術班,とはいえ僕一人なので技師と言う方が適当でしょうか」

「不老不死の研究とはまた違くないか?」

「いえいえ,僕には大事な役割がありますので」


 陰陽道関連だろうか.確かにこいつの占いは不気味なくらい,よく当たる.まるで見てきたかのように.


「本当に色々教えてくれるんだな」

「それはもちろん,悪魔さんには是非とも天使の力と接触してもらいたいので」

「接触……,消させてもらうが?」

「大事なことですよ.さあ,見えてきました!」


 今までも城の姫だとか,戦場の天使だとか,色々と接触しづらい奴らに会ってきてるが,今回は一段と嫌な予感がする.場合によっては本気を出さねばならないな.


「少し待っていてください.今から隊長を呼んできますね」

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