受け持つ問題の範囲
品質管理はチームプレーである。受け持つ検査 (問題) の範囲を決め、人を割り当て、できる限り効率化をはかって試合に臨む。適所に適材をあてられないときはあるだろう。それはしかたがない。ないものを欲するのでなく、あるものでやるしかない。メンバー全員が好き勝手に作業をしても、製品の品質はよくならないからだ。
ここで考えてみてほしいことがある。たとえば、自分が受け持った範囲の作業を完璧にやり遂げ、不具合がまったくない状態にしたとしよう。しかし、他のメンバーが受け持った範囲に不具合があり、発見されないまま製品が発売されたとする。その不具合によりお客さまからクレームが入った。販売元や開発者、上司から『品質管理チームはいったい何をしていたのだ』と詰問された。さて、あなたならこの場面で何を思うだろうか。
自分の受け持った範囲は完璧だ。クレームが入ったのは、他のメンバーの落ち度である。この場面で、実際にわたしはこう耳にしたことがある。『不具合があったところは自分の担当範囲ではありません。自分は悪くありません』と言うのだ。すかさずわたしはこう返した。「お客さまもクライアントも、品質管理にかかわる個人、つまりあなたのことなど認識していない。製品の品質がどうあるかだけを見ているのだ。不具合があったのなら、それはチーム全員で受け持つ問題である」と。
自分は悪くない、とするのは実に簡単だ。自分のみを高め続け、与えられた範囲で完璧な仕事をするのもいいだろう。だが、こうは思えないだろうか。『不具合は自分の担当範囲になかった。しかしそれは、製品の品質全体から見ればごく一部でしかない。自分にできることがあったのではないか。チーム全員で次への備えが必要だ』と。
品質管理はチームプレーである。チームとして最高のパフォーマンスを発揮するには、おたがいを想い、助け合う精神が必要だ。自分自身のすばらしい成果を誇らしく思うのはいい。だが、チーム全員で出す結果に比べれば、個人成績は些末なものだ。あなたが持つすばらしい力は、どうかチームが勝利するために使ってほしい。そんなあなたの働きぶりに、メンバーは感謝と賛辞を送ってくれるだろう。
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