やるならしまいまで
品質管理の仕事では、開発者を頼る場面が多くある。仕様設計がどうなっているかは、設計した本人に聞くしかない。不具合をなおせるのは、動作と構造の仕組みを知っている人だけだ。
検査の幅を広げたいから最新の仕様書がほしい。テストを進めたいから、とおせんぼしている不具合を修正してもらわないと困る。品質管理の責務をまっとうするため、たくさんのお願いをしなければならないのだ。お願いをしたからといって、すぐに求めに応じてはもらえるとは限らない。開発者には開発としての作業優先順位があるからだ。お願いがすっかり忘れ去られる場面だってよくある。
ここでもっとも困るのは、お願いをした本人が何をお願いしたのか、いつまでに願いがかなっていないといけないのかを見失ってしまうことである。願いがかなわず問題が起こったとき、なかには『品質管理としての務めは果たした。問題が起こったのは、応じなかった開発者の責任だ』と言い張る者もいる。
品質管理の仕事は、製品の品質を高めるためにある。開発者の対応が滞っているのなら、それを動かすのも品質管理の責務のうちだ。問題の責任がどこにある、誰にあるといった話は、乱暴な言いかたをするなら「実に些末で、どうでもいい」のである。製品の品質を高め、購入したお客さまによろこんでもらうためならば、心を鬼にしなければならない。開発者がどれほど忙しそうにしていようが、『返答はどうなっている。返答がないので必要な検査が滞っている』と催促するのだ。もちろん、ものの言いかたには気を配ってほしい。
放り出された物事の責任は、それにかかわるすべての人に等しくある。製品の品質を高めるために必要だ、と始めたのなら、しまいまでやり遂げよう。誰にも引き受けられなかった問題のせいで割を食うのは誰だろうか。間違っても、お客さまであってはならない。
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