楽しみにしているお客さまを想う
どのような製品にも、それにふれて幸福感を得るお客さまが必ずいる。家に帰れば、あなたも「お客さま」のひとりだ。好きな製品にふれ、時間を忘れたことはないだろうか。製品の情報をさがし、発売日を心待ちにした経験はないだろうか。その利便性から、生活が豊かになったと実感した瞬間はないだろうか。
使いかた、ジャンル、有形無形を問わず、時間とお金の消費に見合った魅力や利便性を、製品は持っている。何によって幸福感を得るかはお客さましだいだ。思う存分、選り好みして構わない。
しかし、仕事となれば話は別だ。自分の好みに合わない製品を作ることもある。買うはずもない製品の品質管理をすることだってある。そんなとき、『わたしの好みに合わない。だから、この製品の仕事はしたくない』と、はたして言ってよいものだろうか。高度な知識と開発スキルを持つ技術者、品質管理の経験を積んだプロフェッショナルが、その製品が好きか嫌いかだけで仕事にノーと言う。
答えは簡単だ。言ってよいはずがない。なぜなら、製品の完成と発売 (利用可能になる日) を心の底から楽しみにし、待っていてくれるお客さまが必ずいるからだ。
思い出してみてほしい。あなたが見向きもしなかった製品で、無邪気に楽しんでいる人々を見たことがないだろうか。あなたが心底楽しんでいるとき、『それってそんなに面白いの?』と、不思議そうに問われたことはないだろうか。何に、どのような楽しみ、よろこびを見いだすかは、お客さまの自由だ。だからこそ、製品開発に携わる者は、お客さまが楽しみ、よろこぶ姿を強くイメージして、自らの仕事をやり遂げる必要がある。製品が発売されたあとに得られる最大の報酬は、製品をよろこぶお客さまの姿、声である (数字がともなってほしいと望むのは、経営層だけでいい) 。
お客さまを想えば、どのような仕事にも、意欲をもって取り組めるはずだ。なぜなら、あなたはすでにお客さまとしての「楽しみ」を十分に理解しているのだから。仕事となれば話は別だ、と思うかもしれない。しかし、こう考えてみてほしい。あなたがひとりのお客さまとして得られたであろう幸福感を、プロフェッショナルを名乗る者の好き嫌いによって奪われたとしたら。あなたは、はたして平気でいられるだろうか。
好き嫌いがあるのは構わない。だが、お客さまの幸福感を奪うような仕事だけは、どうかしないでほしい。
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