第17話 最終話 再び豪邸を建てた真理

それから半年、田園調布に屋敷が完成した。此処に一人で住むというが部屋数も十部屋もあるとか、一体どう使うと言うのか一般の人の感覚で理解出来ないだろう。

 「やっと戻って来られたわ。お父さんお母さんが建てた家じゃないけど、見て、どう以前にも増して素晴らしい豪邸でしょう。それと以前お父さんが雇った人、数人が来てくれたの。またお嬢さんの元で働きたいと言ってね。嬉しかったわ」


 真理は仏壇にそう語りかけた。お祝いに親友の園子が子供連れで訊ねて来た。

 更に仕事仲間やお得意さんに銀座のホステスまで招待した。その数、百名前後。ホテルの出張ケータリングを頼み、まるでホテルのパーティーのようだ。更に真理の会社の社員には自社製の革製品即席販売所まで設けて即売会を開いた。

流石に商人根性が出て来たようだ。その日の売り上げだけでも数千万、招待客も一流の人ばかりだから売り上げの桁が違う。勿論無理に押し付けた訳でもないが、真理が扱う皮製品はそれほど人気があった。


 盛大なパーティーも終り園子と二人だけになった。

「おめでとう真理、沢山の招待客、しかも有名な会社の社長さん達も大勢来ていたし、たいしたものね。しかもちゃっかり商売までしちゃって。商売根性が出て来たのね。でもやっと此処に戻って来たのね。それも自分の力で偉いわ」

「ううん、すべて園子の協力のお蔭よ。園子が居なかったら今も青いテントの中よ。こっちこそありがとう」

「処でこんな広い家に一人で住むつもり? 部屋だって十部屋以上あるのでしょう。維持費だって莫大よ」

「ホラ昔、お父さんが雇って家で働いてくれた人達、数人がまた来てくれる事になったの。

その人達に使ってもらい、あとはお客さんが来たときに使うわ。そうそう園子専用の部屋も用意したわ。だから寂しくないわ。それと時々、大々的にパーティーを開き即売会したら維持費くらい出るでしょう」

「なんだって私専用の部屋? もう私を同居させようとしているの。それにしても立派に経営者になったものね。もう青いテントは懲りたようね。お金持ちお嬢さんが浮浪者生活だったものね。今では笑い話だけど。そうそう真理、お金があっても一つだけ足りない物があるわ」

「なに、その足りない物って?」

「もう三十半ばを過ぎているのだから、貴女もいい加減に結婚したらぁ」

「あら? 忘れていたわ。私の人生、波乱万丈だったから。もう少し波乱な人生を楽しみたいもの。それに失敗しても園子が付いているし」

「もう! やめてよね。真理にはいつも驚からさせるばっかりなんだからぁ」


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私の波乱の人生 西山鷹志 @xacu1822

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