第46話 エピローグ② 晴人たちのその後
彩雲祭が終わり、学園に日常が戻ってきた。俺は再びデザイナーとしての一歩を踏み出している。
というか実は、ユキのテイックトックでフォロワーを集め、ショーのライブを配信したら、その後のウェブショップのOPENでBASEがサイトダウンしたというくらいのインパクトがあった。
余裕をもってそれなりの数を用意したつもりなのだが……一瞬で蒸発して……。このままいくと絶賛フル稼働中の工場がパンクだが……夢があるというより、ある意味の怖さがあって、密かに心中震えていたりする。元精鋭デザイナーの俺が。
さらに数日後。八重からとんでもない額の請求書が届いた。もちろん一介の高校生に払えるはずもなく、現時点までのECサイトの売り上げを全て充てたものの、いまだに大赤字。この年で借金とは……予想もしていなかった人生になってしまった……。あの怪しい関西弁も伊達じゃなかったというわけか。
さらに加えて。こんどは嬉しい話。
自由服のこの学園なのだが、制服を着てくる生徒をよく見かけるようになっていた。というより、制服っぽいコーディネートを含めると半数近くに及び、彩雲学園の空気感をガラッと変えてしまっていた。無論と言っては何だが、俺がサイトで売っている服を着ている生徒も多数。何という変化だろうか。嬉しいを通り越して、少しあっけにとられている。
その、学園ショーを一緒に作り上げたユキや悠馬とも、以前と同じように学園内でワイワイとやっている。
朝のお決まりの日常会話から、昼のカフェテリアでのおしゃべりも弾む。二人とはバスケ部があるため一緒に帰れない日が多いが、美月とは駅前までを共にするのが毎日になっている。
今日も下校時。港南中央公園脇を下るスロープにて美月が話しかけてきた。
「こうして一緒に制服着て歩いていると……」
「歩いていると?」
「なんだかずいぶん遠くまで来たんだなぁって感傷的になるわね」
美月が、遠い目をする。
確かに、と俺も思う。小学生の時にショーで失敗してからは暗闇の中だった。制服から逃げて、全て無かったことにして、このままずるずると怠惰と諦念の中に沈み込んでゆくのだとぼんやり思っていた。
そんな折に美月が現れた。美月は俺を日陰から日向に無理やり引っ張り出してしまった。その陽光が眩しくもあるのだが……。この道を再び自分の足で歩いていきたいと今は思っている。
「私に感謝してる?」
美月が不意に聞いてきた。
「晴人と一緒に制服で歩いている私。流石のエゴでしょ?」
ふふっと美月が笑う。
「伊達や酔狂でやってないって言ったでしょ。私、晴人には執念というか怨念があるから。覚悟しておいて」
美月の俺を見つめる瞳が漆黒に輝いている。
その瞳に、ヤラれる。
俺は空を見上げる。
よく晴れ渡った青い空がどこまでも広がっている下校路だった。
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お付き合い、ありがとうございました。
月白由紀人
制服美少女の私とラブコメしましょう 月白由紀人 @yukito_tukishiro
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