痛い系な転生者
もう夜も遅かったので、4人は町のホテルに戻った。
エディタとジアーナは、もともととっていた二人部屋でそのまま休み、残りの3人も別の部屋をとった。
だが、アンドレーが部屋をとったのは、休むためではない。
彼は「不眠」スキル保有者なので、寝るための宿は要らない。
彼に必要なのは、寝る部屋ではなくやる部屋だ。
アンドレーと同部屋のエミーリアとオリーヴィアは、しっかりとアンドレーのお相手をした。
これが彼女たちのお仕事なのだ。
アンドレーはポムたちとの戦闘の余波で、いつも以上に興奮気味だったから、今夜のお世話は大変だった。
「アンドレー様、もうわたしダメです」
2人の女が、なんどもそんな感じのことを言いながらベッドから逃げ出そうしたが、許されなかった。
アリ地獄の光景だった。
穴の淵に手が届いかと思うと、ズルズルと滑り落ち、がんばって穴を這い上がっても、また滑り落ち……。
そんな感じで、2人はいつまでいつまでもベッドから出ることを許されなかった。
アンドレーは不食でもある。
空腹にならないかわりに、満腹にもならない。
不眠症。満腹知らず。性欲以外の欲がない。
彼の家に百の女が必要な理由も納得だ。
こんな男と一夜を過ごす女が、2人で足りるはずがないのだ。
天界の女神さまは、ほんとうに
夜が明けた。
窓から朝日が差し込んできた。
美しく乱れた裸体の美女二人が、ベッドに折り重なって、死んだように眠っている。
アンドレーは、彼女たちの頬にキスをして、
「お疲れ、ハニー」
と感謝を述べて、部屋を出ていった。
すぐに、隣の部屋に宿っているエディタを呼んだ。
寝ぼけ眼の彼女は、すぐにホテルの入口に連れて行かれた。
ホテルの入口に行くと、ギョッとした。
総勢70ぐらいの女が、ひしめいていた。
すべてアンドレーのハーレム女で、その中でも冒険者として稼ぎ役をしている者たちだ。
アンドレーが、今朝ここに集まるようにと、昨夜のうちに連絡を入れていたのだ。
アンドレーが全スキルをコンプリートしているのは、他ならぬ彼女たちのお陰だ。
アンドレーは、貢がせチートホストだ。
「あの……この方々は?」
エディタは、何が何だかわからないといった風だ。
「今からこの女たちと冒険者ギルドへ行け。
そして、スキルをドロップしてもらってコンプリートしてくるのじゃ」
女たちの群れの中から、エリザヴェータが出てきた。
ハーレムのお局だ。
かつて、誉れ高き国家の役職についていた
同性異性関係なく尊敬され、女イチ剣が似合い、女イチ鎧の似合う、気高き穢れなき貴女であった。
そんな彼女が、なんとも淫乱なハイレグ風のドレスを着ている。
凛々しい剣士の顔で、ハイレグをはいている。
「エディタ殿。ギルドへ参ろう」
エリザヴェータがエディタの手をとった。
エディタはわけがわからぬままエリザヴェータについていった。
町は異様な光景に包まれた。
女70人がエリザヴェータとエディタを先頭に大名行列をつくって行進している。
通行人は、度肝を抜かれたような顔で行列を凝視していた。
行列がギルドになだれ込んだ。
ハーレム女どもが、つぎつぎエディタにスキルをドロップしていった。
30分もしないうちに、エディタはソードマジカの全スキルをコンプリートした。
エリザヴェータがエディタに言った。
「これで準備は整った。
あとは職業試験をパスすれば、スキルを使えるようになる。
ここから先は、自分でやれるだろ?」
エディタは、戸惑いとときめきを同居させた瞳で、
「はい」
と答えた。
ドロップ作業を終えると、エリザヴェータ以外のハーレム女は旅立ちの村に帰っていった。
エリザヴェータとエディタが、アンドレーたちの部屋に戻ってきた。
部屋には全員揃っていた。
アンドレー、ジアーナ、エミーリア、オリーヴィア。
エリザヴェータがアンドレーに抱きついた。
「アンドレー殿。
昨夜はとても寂しゅうございました」
「我もだ」
二人はベッドにもぐりこみ、激しい戦闘をおっぱじめた。
ジアーナがエディタに駆け寄った。
「ねぇ、スキルコンプリートした?」
「え……ええ。
でも、こんなことしていいんでしょうか?
なんの苦労もせずにスキルを手に入れて……
なんだかズルいことしてるような気がして、わたし……」
オリーヴィアが言った。
「あなた甘いわよ。
どうしてあなたはポムみたいな男に引っ掛かったんだと思う?」
エディタは答えられなかった。
「スキルがなかったからでしょ?
だからドロップの話につられちゃったんでしょ?」
エミーリアが続けて言った。
「甘い話で人を引っ掛ける悪い奴がたくさんいるわ。
そんな人間に従って辛い目に遭わされないためにも、スキルは必要よ。
スキルは、害虫を遠ざける厄除けにもなるのよ」
ジアーナが言った。
「そのスキルで、清く正しく強い冒険者になって、弟くんや、村のみんなを助けて上げてよ。
それができれば、ズルくもなんともないよ。
最後の最後に大事なのは、手段やルールじゃなくて、涙が止まったどうかなんだから」
エディタは、目に涙を浮かべていた。
「そうだね。
私ががんばって、大好きな弟に、お腹いっぱいにご飯を食べさせてあげる!」
彼女たちが、そんな感動的な会話を交わしあっている背後では、アンドレーとエリザヴェータが、互いの肌を激しく交差させていた。
汗がドラマチックに迸っていた。
いやらしい声が聞こえていた。
「嗚呼! アンドレー殿!
もう少しお手柔らかに!
そうでなければ、私壊れてしまいます!」
「安心するのじゃ!
我には『不名誉』と『
違反スキルは無制限じゃ!
じゃから安心して汚れよ!
女は安心して汚れよッ!」
やはりアンドレーは、性欲以外に何もない
痛い系(いたいけ)な転生者―煩悩を断ち切った僧侶が天寿を全うして異世界に転生したら女神様のミスのせいで性欲のモンスターに化けてハーレムを作っちゃった話― ドロップ @eiinagaki
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