痛い系なKISS
アンドレーは、石になったザッツの前に立った。
そして叫ぶ。
「
青く光った五本の指でドリルの形を作り、正拳突きの構えをとった。
「
ピシッ!
突きを受けたザッツの石像は、見る影もなく、爆発四散した。
アンドレーは、石化して息絶えた骸を、さらに木っ端微塵にした。
冷酷無慈悲のオーバーキルだ。
ポムが、恐ろしげな悲鳴をあげた。
車椅子を動かして逃げようとしたが、アンドレーの視線を感じて動けなくなった。
やつの視線にこもった恐ろしいまでの殺気がポムをいすくませた。
アンドレーは、今度はマルコの前に立った。
そして、
「
マルコが粉になって、暗闇の荒野に消滅していった。
「
スコットも、散らされた。
3人の掃除が終わると、アンドレーの視線がポムを捉えた。
ポムはもう、夢と現実の区別がつかなくなっていた。
アンドレーという存在が、伝説上の魔獣のように思われてならなかった。
彼はやっと気づいた。
俺は、決して相手にしてはいけない化物を相手にしてしまったのだ、と。
ポムは、何も言えず、何も考えられなくなった。
アンドレーは、一体、ポムをどうする気なのか?
やはり、無残な方法で殺すのか?
きっと殺すに決まっている。
その場の誰もがそう思ったが、このあと彼は意外な行動にでた。
「
死者を完全蘇生させる
倫理上の問題から、教会の司祭だけに使用が許されたスキルだ。
アンドレーはそのスキルを使って、3人の男を生き返らせた。
天使が現れ、ふーっと息を吹きかけると、今さっきまで彼らが立っていた場所が光りに包まれた。
光が消えると、粉々になったはずの彼らが、元通りの姿でそこに立っていた。
蘇生が終わると、彼らは悲鳴をあげて、大声で泣き始めた。
三途の川を半分まで渡った記憶が残っていたらしく、その恐怖のために、彼らはもう戦意喪失状態であった。
アンドレーが、
「グレイブドール」
と唱えると、3人は死に物狂いでその場から逃走していった。
スキルは発動しなかった。
脅しだったようだ。
3人の男が消え去ると、アンドレーは縛られた二人を開放した。
「アンドレー様!
やっぱりあなたは王子様!」
ジアーナが迷いなく抱きついた。
アンドレーは彼女からキスの雨を浴びた。
エディタは、顔を赤らめて、もじもじしていた。
ポムの声が聞こえた。
「俺に限ってはここで殺しておいたほうがいいぜ。
でなきゃ何度でもお前の命を狙うぞ」
彼には、こんな言葉しか残されていなかった。
彼は、彼の生涯で、この手のセリフしか言ったことがないのかもしれない。
「構わん。
所詮この世は諸行無常じゃ。
なんびとも、いつ死んでも悔いのないように生きねばならぬ」
アンドレーはそうとだけ言って、あとはポムに対して何も言わなかった。
彼はエディタを抱き寄せた。
エディタはべつに抵抗はしなかった。
アンドレーの腕に身を任せた。
彼の唇が近づいてきた。
悪魔色に染まった唇を見ても、怖いとは思わなかった。
気持ち悪いとも思わなかった。
吸われたい……こころからそう思えた。
エディタはそっと目を閉じた。
次の瞬間、暖かな感触を唇に感じた。
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