第一章 ランタンと死体の王子
「いやあ、すまなかったなあ。人買いかと思っちまった。すまねえ」
「馬鹿野郎、おまえのせいで死ぬところだったじゃねえか。だから相手は確認しろと話したたろうが」
「……死ぬのは俺だったはずだが」
教会裏手に回した車の座席からランタンへ向けて毒付くと声を抑えてランタンを点滅させていた。
「……お前の場合は死なねえだろう」
「どういうことだ」
死なないが痛みがないわけではないのだが。
「こいつには心臓がない」
「あー……通りで。なにか混じってるにおいがするのはそれでか」
思わぬ返答にエリックは間抜けな声をあげた。
「……ねえ、ワイアットが呼んでる」
クロエが教会内部へと続く扉から顔を出したことで話は打ち切られた。
「おぅ、ありがとな」
声色を変えた言葉が投げかけられエリックは入れ違いにやってきたクロエへと視線を戻した。
「なに?」
「べつに」
両手に抱えた荷物を車に積み込んで往復していくクロエの姿を横目で見送って扉の向こうへと消えてからランタンへと口を開く。
龍の心臓の瞬き 花壁 @hanakabehanakabehanakabe
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