最終話 まったくもってお恥ずかしながら

// 夕暮れの道を歩く主人公とヒロイン

// ちょっと距離が離れている

//SE トラックの音

// 近づいて来た車に、ヒロインを庇おうと主人公が前に出る


「ひゃあぃっ!」// 驚き


「……あ! ごめんなさい、アナタ!」// オドオド


「車から私を守ってくれたんですよ……ね?」


// こくこくと頷く主人公

// そんな彼の服の袖をぎゅっと握るヒロイン


「きょ、今日は本当に、お恥ずかしい所をお見せしました……」// 暗い感じ


「まさか私があんな、メスガキになってしまうだなんて……」



「発症中のことはどうか忘れてください」


「あぁ、思い出しただけで恥ずかしい」



「私、もう、溶けてしまいそうです……」// 消え入るような声で



// 顔を覆ってその場にうずくまるヒロイン

// 気にしないでと彼女を慰める主人公

//SE 自転車の鈴の音



「あっ、すみません」// 慌てた感じ


「ダメですよね、道の真ん中でしゃがんでたら……」// 意気消沈


「私ったら、本当にダメダメで……」



「……くすん」



// ヒロインの手を引いて歩き出す主人公

//SE 蝉の鳴く音


「……あの」


「驚かれましたか? 私があんな病気になってしまって?」


「どん引きしましたよね?」


「やっぱり私なんかと、結婚するんじゃなかったって思いました?」


// 首を振る主人公


「嘘です!」// 食い気味


「アナタは優しいから、そう言ってくれるだけで……」


「本当は私のことなんて……」



「……あっ♥」



// 主人公がキスをする

// ヒロイン黙って受け入れる

// 甘い吐息のあと、お互いの顔を離す



「……ダメですよ、こんな人通りのある所で」// 暗い声



「えっ? 『メスガキの時はノリノリだった』?」// 驚き


「『むしろ自分からしてほしそうだった』……って!」



「そ、そそ、そんな!」// 盛大にキョドる



// 顔を真っ赤にしてうーうーと唸るヒロイン

// 立ち止まったヒロインの手を引いて、また歩き出す主人公

//SE 風鈴の音色



「……アナタ」// 真剣な声色



「ひとつ聞かせてもらってもいいですか?」


//SE 車の通過する音

// 少しヒロインが主人公に歩み寄る



「アナタは、私との結婚を後悔していませんか?」


「お見合い結婚で、好きでもない女性を押しつけられて」


「本当は、もっと別の人がよかったと、思っていたりしませんか……?」


// 首を傾げる主人公

//SE ぼそぼそとしゃべる音

// はっとするヒロイン



「『キミのことを、世界で一番愛してる』……って」// 驚き


「けど、私たちはお見合いで……」// 悲しみ


「え、『三年も一緒にいれば、愛着も湧く』?」


「…………そんなの」


// メスガキ化していた時のことを引き合いに出す主人公

// あわてて肩を跳ね上げるヒロイン


「や、やめてください! さっきまでのお話は!」// 焦り


「あれは、その……私であって、私でなかったというか!」


「病気だから仕方なかったといいますか!」



「え、『性格は変わっても、思ってることは一緒』?」// 困惑


「『メスガキ退行病のパンフレットにそう書いてある』?」



「は……はわわ! はわわわわわわわ!!!!」// 大慌て



// 再びその場にしゃがみこんだヒロイン

// 仕方なく、主人公は公園のベンチへと移動しようと提案する



「は、はい。そうですね……」


「少し、公園で休んでから、家に帰りましょうか……」



// 公園のベンチに腰掛ける二人

//SE 椅子の軋む音



「……あの、さっきのお話ですけど」// おずおず


「アナタのことを愛してるっていうのは」


「たぶん、その」



「……本当だと、思い、ます」// 消え入るような声で



// 頷いてヒロインの手を握りしめる主人公

// ヒロインが身体を強張らせる

//SE 子供たちの遊ぶ声



「メスガキになって、全部分かられちゃいましたね」// 観念した感じ


「私みたいなダメ人間に、いつも優しいアナタのことが」


「私はもう大好きで」


「アナタのためなら、ご飯の勉強も、家事の勉強も」


「いっぱい頑張れて……」



// 主人公のリアクションを待つヒロイン

// それにこくりと主人公が頷く



「ふふっ」// 少し元気になる


「それに、子供だって……」



// 深呼吸して少し間を置く



「本当は、はやく欲しいなって思ってるんですよ?」// 真剣



「けど、今のアナタはお仕事が大事な時だから」// 少しトーンダウン


「私が支えてあげなくちゃって……」



// 首を振る主人公

//SE 夕焼け小焼けの無線放送が流れる



「……え?」


「あ、え、あ、えっと、その……」


「そう、だった、ん、です、ね……」// 照れ



「お、同じ気持ちで、私も嬉しいです……!」// はじらい



//SE ぼそぼそとしゃべる音


「……ふふっ」// 憑きものがとれた感じ


「そっか、私たち、もうとっくに両想いだったんですね」


「こんなことなら、もっとはやくに話し合っておくべきでした」



「メスガキに感謝ですね」// 嬉しそうに


「やっと、私も、素直になることができました」


//SE ぼそぼそとしゃべる音

//SE 自動車の走る音


「……はい」


「愛していますよ、アナタ」


「世界で一番好きです。誰よりも愛しています」



「私も……♥」



☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ようは「結婚三年目なのに素直に旦那に甘えられないストレスで、メスガキ病になってしまった」というお話でした。やっぱり夫婦はいちゃ甘が最高よね。

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朝起きたら、嫁がメスガキになっていた件について kattern @kattern

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