第8話 始まり

 化粧室で鏡を見たら、ひどい顔になっていた。目が赤いから今さらメイクをしても無駄だと思いここあはメイクを落とした。こっちでいこうかなと自分のすっぴんを見て思う。


 席に戻ったここあを見た鳴海は、すかさずその方が可愛いと言った。その言葉がここあはうれしかった。そんなことを言ってくれた人は、今までだれ一人いなかったからだ。


「鳴海君の彼女が羨ましいな、こんなにやさしい彼がいるんだから」

 つい本音が出た、言ってしまってここあは照れた。耳たぶが熱い。

「そんなのいないよ、俺もてないもの」


 嘘だと思った、彼のファンはそれなりにいる。誰かと絶対に付き合っているはずだ。

「ほんとうかなあ、だって会話が慣れすぎてる」


「あれ、ほんとだ、不思議だ。俺、女の子と話すの苦手なんだけど、原田さんが話しやすいからかな」


 鳴海も耳を赤くした。二人の間に沈黙が流れた。もちろんいやなそれではない。

「あ、これ忘れてた、君から送ってあげてってじいちゃんが」


 鳴海はもうひとつレターパックをとりだした、もかにだろう。今日のことと一緒に話してあげようとここあは思った。


「ばあちゃんが、ありがとうって。じいちゃんが最後楽しそうだったからって」

 こちらこそだと思った。昔、警察にいたころに、ここあと同じぐらいの女子高校生を救えなかったことがあり、ずっと気にしていたと書いてあった。その子のこともあってここあと、もかを助けたかったと書いてあった。それが最後に叶って嬉しかったと。


 サトシさん、本当にありがとうございました。負けずに生きていきます。もかという友達もできました。ここあは目を閉じサトシに誓った。


「卒業しても、逢ってくれるかな、そのじいちゃんの話もしたいし」

 鳴海が照れたようにいう。私なんか、言いかけてここあは思いとどまった。ダメになってもともと、ここあは喜んでと頭を下げた。

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親ガチャ でも生き抜いてやる ひぐらし なく @higurashinaku

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