志路見海水浴場 -2- 旅の終わり
改めてゆったり仰向けになり、吸い込まれそうな青を楽しむ……上だけなら我が町でも楽しめる(とはいえ電線もない様な場所は限られるが)ので、まるで青色のソーダに入ったアイスフロートを交互に食べ、飲む様に視点をゆっくり移動させつつ、聴覚に入るノイズ……子供連れの黄色い声や談笑すらエッセンスとして楽しむ。
そこそこ勢いのある風で真夏の直射日光が攪拌され、幾分緩やかになった気温が僕を眠気に誘うが……残念ながら本当に寝てしまうと其処は一人旅、夕方迄寝入ってしまえば志路見駅でした妄想が現実となってしまうやもしれぬ。まぁ貧乏とはいえホテルに泊まれ、自宅まで普通運賃で帰宅出来る程度の金は一応持っているが。
名残惜しいがそろそろ一時間程経った、正午にもなっていないが帰宅する事にする。この時間に普通に帰ったら早過ぎるが、実は自宅にいる妹にS市で買い物して来てくれと言われているのだ。一日散歩きっぷは我が町から志路見迄の運賃で元は取れているのだが、何せこういう時でしか此方に行く機会がない。僕が自宅にいて妹がこの切符を使っても何らかの頼み事をすると思うので無下に断る事も出来ず……。
こういう現実も折角の一人旅の緩さを台無しにするのだが、だが浦島太郎が如く現実を全く気にせず300年だったか? 過ごすより、こういう景観地は若干未練が残る程度の方がいいと思う。 事実帰る時でも
「また来よう、今度は妹も一緒に、お互い水着など着ないだろうが彼女が居る事で写真等撮ってもトラブル防げそうだしな」
と早くも次回の脳内計画を立ててしまっているからな。
……
帰りも先程の至福の5分を楽しむが……先程迄何も居なかった筈の埠頭の消波ブロックの上に見慣れたウミネコの他、黒い鳥がいる……ウミウだ。
ざっと見て50羽近いウミネコが犇めく場所の先端に、O市などでは中々見かけない黒い海鳥が数羽居るのは新鮮だ……遠くで形迄確認出来た訳じゃないが、志路見の海が手土産をくれた様な、幸せな気分になった。これまた漁師の人には稲穂に留まるアキアカネが如く見慣れた光景に感動する観光客の様に奇異に映ってるんだろうな。
……
さ、時間にして僅か1時間程の滞在だったが、充分に切符の値段は取り返した気がする。S市での買い物も手早く済ませ、明日からはまた日常に戻るだろう。
道中での色々目を見張る建物や史跡、
ぼうとしている時に見た幻覚や色々な雑念、
それ等を良くも悪くも忘れさせてくれた海と空の青……
これ等を日々を生き抜く活力としよう、そう誓い……僕は何とか座る事の出来た帰りの電車内でうとうととする……
これで最後に寝過ごし、終点まで行ってしまったら、其れもまた楽し……妹には呆れられるだろうがな。
……
to be continued
週末 あるまん @aruman00
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
まったくかけまっしぇ~~~ん!!/あるまん
★53 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます