志路見海水浴場 -1-

 砂利だ。


 砂利、一面の砂利。その先は……


 青。一面の青。


 波一つ、雲一つないといえば嘘になる。風もあり其れなりに波は寄せているし、水平線にO市からの観光フェリー? も見え、更には無邪気にはしゃいでいる海水浴客もいて。


 だが、


 海から空までをひとつなぎに続く、水色の絵の具を太い筆で一面に塗った様な、いや水に溶かした絵の具を其の侭ぶちまけた様な青は、何度来ても、何度見ても、感動するものだ。


 ……


 繰り返すがこの志路見海水浴場は正確には海水浴場ではない。遠浅の海岸ぶちで泳ぎやすい所に勝手に海水浴客が集まっているのだ。

 海水浴場といえば大多数の人間は一面の白い砂を思い浮かべるだろう。ビーチサンダルが無ければ太陽の灼熱によって鉄板が如く熱せられ、不用意に裸足で踏み入れた子供時代耐えられず、アチチアチチと砂浜を飛び跳ねながら海まで駆けていき冷却したものだ。無論一面の青を楽しむ様な余裕はなかった。


 この志路見海水浴場は、冒頭でも言ったが……海岸にあるのは砂利、である。まるで河川敷の様に平均5センチ程の石が水辺迄転がっているのだ。

 礫浜というらしいが……無論裸足で行くといぼ付きの青竹踏みが可愛く見える程健康? になるだろう。僕は夏場、主に甲の部分に穴が幾つも空いた柔らかいガーデンシューズというのかな? を履いているのだが、思った以上に歩き難い……こけたら足首はおろか全身打撲で大惨事だ。とはいえ靴を買い直しに志路見市内迄行って買い直す余裕もなく、ゆっくりと踏みしめながら海を目指した。


 浜に下りる階段から凡そ20メートル程、海に辿り着く……シューズを脱ぎ、ゆっくりと足を踏み入れる……ヒヤッとした感じはしたがこの猛暑、思ったよりも冷たくはない。波も精々20cmという所かな?

 凡そ3年振りか? の海水タッチだ。数歩踏み入れ其の感触を楽しんだが……直ぐ足裏が痛くなり引き返した。とはいえやはり海岸に来たら、海水を触りたくなるものだ。まあ是でノルマをクリアー、と勝手に満足し、先客の景観に注意しつつ改めて用意していた厚さ2cm程、30㎝四方程の差布団を敷き礫浜に座る。

 ゴツゴツした石が僕の尻を圧迫し座り辛い……が、違和感を感じたのも一時、直ぐに海岸の暑さで思考がぼんやりとしてくる。とはいえ流石に海の近くだ、其れなりに涼しい風が吹いて、我が町の朝方歩いていた時よりも全然過ごしやすい。


 そして改めて、先程の「青」を見る為に目線を上げた。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

週末 あるまん @aruman00

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ