海水浴場へ

 グーグルマップによると志路見駅前からとりあえず海水に触れられる、海水浴場「らしき所」迄は僕の足でも5,6分という所だ。

 らしき所、といったのは、必要な監視員や救護施設等が無い為厳密な海水浴場ではなく、自己責任での訪問となる為だ。とはいえテントを張る為のサイトや駐車場もあり、グーグルマップ上でも「志路見海水浴場」となっている為そう言わせていただく。


 志路見駅から海水浴場方面に歩こうとすると、直ぐに長さ10m弱の古い橋がある。この橋自体も古めかしくて好みだが……グーグルマップで見ると近くの高台にある国道迄の500m程、ぐねぐねと曲がる幅2m程の川(というか水路)の上に、コンクリや鉄筋で出来た立派な物から、木の板で作られた物、ただの丸太を渡しただけの物まで何と10個以上の小さい橋がかかっている。

 1軒の家の出入りの為だけにかかった橋や、河上駐車場として作ったとしか思えない橋まであり、もし車で来ていたら国道沿いの駐車場に車を止め、橋の見学をしながら海岸まで降りていくのもいいかもしれない。

 とある空き地に碑が建っている。安全祈願なら神社の方が好みだがこの狭い道にあったら参拝客も大変だろうな。 

 海辺では猟師さんと思わしき人達が談笑している。線路→今歩いている狭い道→漁師さんの家と思われる民家→海、といった並びだが思ったより磯の香りがしない。とはいえ僕の町とは全然匂い、というか空気は違う。

 O市の警察による密猟禁止・密出入国通報喚起の看板がある。この志路見駅は隣国の映画ロケ地にもなっており外国人観光客も多いそうだ。

 壁際に30センチ四方ほどの小さい木箱が100個ほど積まれた家もあった。タコ箱とも形が違ったが何に使うのだろう……。


 この海岸までのわずか5分ほどの距離でも、これだけの見どころがある。まあそう感じているのは自分みたいな異邦人だけで、地元人は何を感動してるのか不思議なのかもな。

 そう、大体の場合50年以上経ったいい感じに懐かしい建物とか背の高い木々とかも、そこにいる人間にはただの古い建物、落ち葉の鬱陶しい木々、としてしか認識されないだろう。

 志路見駅のあるO市は観光都市で、まだこういうノスタルジーな風景も保全される傾向にあるのだろうが、我が町周辺なぞ100年近く前からある建物ですら保全もほとんどされずに取り壊され、マンションやコンビニになってしまう。

 いやそれ等は土地が有効活用される分まだましで、少しへき地の学校やらは壊して更地にされたまま云十年放置されてたりする。

 確かに校舎をそのまま残して校内に子供が侵入して事故を起こしたり、雪害によって潰れたりする方が危険なのかもしれないが、大正時代からあった校舎や甲子園の常連校でもあった校舎があっさりと取り壊されるのは流石にもう少しどうにかならないのかと思った。その二例は跡地に記念碑すら存在していないのだ。


 ……と、夏の海岸ぶちを歩いているのにまた考えが飛んでしまった。流石に観光地、この狭い道路でも割と車が来るので気をつけねば。

 横を見ると広大な水平線も見えてくる。そろそろ今回の目的地、志路見海水浴場だ。

 


 

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