第4話「草むらと夢」

「ペンダントのことを馬鹿にされて、しかも、「嫌い」なんて言われて。あの子にはペンダントなんてついていなくて、私にだけついてて…誰もペンダントなんて持ってないから、私は異端人なのかな、って…。」

一度話し始めると、声が止まらない。今まで圧縮してきた思いが全部全部溢れてくる。自分の限界を超えたキャパのストレスや疑問、単なる感情などが、何もかも溢れてくる。どうしたらいいのかと考えるけど、どうにもならないようで、どうにもならなかった。





ただただ、私は泣いていることしかできなかった。






しばらく泣き疲れて寝ると、いつの間にやら夜だった。あの夜に見た星空がまた目に入る。

(久しぶりに見たな…)

最近は寝転んでもいない。勉強して、そのまま机に枕を置いて寝る日々。長らく横になっていない体は悲鳴をあげており、筋肉が硬直し始めていた。

今寝っ転がっている体勢から、一生起きたくない。体も心も、頭も疲れている。とにかく疲れた。寝たい。

そのまま、眠りに落ちた。



その時見た夢は、私が猫になれなくなった夢。

どう足掻いても、猫になれなかった。思いっきり大声で「猫になりたい!」と叫んでも、心の中で叫んでも、猫のような形になってみても、猫になれない夢。

そして不思議なことに、全くと言っていいほど猫を見ない。あの黒猫ちゃんはいかにも、あの時見た白い猫ちゃん、そこらじゅうにいる野良猫ちゃん、どこかで飼われていたであろう首輪をつけた子達。




そして、ネコガミ様も現れなくなっていた。

ネコガミ様の周りに生えていた花や草もだんだんと枯れ果てて、いつの間にやら廃墟のようなものになっていた。

「あれ?」

そう思った時には、もうそこに家はなく、ただの空き地だった。草も何も生えていない、ただ土があるだけ。

「売土地」の看板だけが貼ってある、殺風景になっていた。

そのネコガミ様を探す気力もなく、草がある場所に行く気もなく、何も気力が起きないまま、その場に座り込んでしまった。





「…きろ!おk、ろ!おい!」

ハッと目が覚めたら、もう太陽が昇っていた。重い重い目を開けると、黒猫がコチラを見ていた。

「お前!泣いてただろ?大丈夫か…」

大声で涙ぐみながら黒猫は話しかけてくる。

そんな真剣な顔を見てたら、思わず笑ってしまった。

「…笑える気力があったのならよかった」

そう言って、黒猫も少し微笑んでくれた。

私は、泣きながら黒猫の方を見つめる。今、私が猫なこと。目の前に頼りになる人がいること。



そして、首輪にペンダントがついてること。


‘’生きてていいんだ”



そうやって思った1日だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オモイビト!ーペンダントとネコガミ様ー 結花紡樹-From.nanacya- @nanacya_tumugi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ