第2話
お洒落な内装のある一室。その一室のベッドの上に一記は寝かせられていた。そして一記は小さく声を上げながらゆっくり目を開けると、見慣れぬ室内の光景に不思議そうな顔をした。
「……ここ、はどこだ? そもそもどうやって俺はここに……?」
わけがわからないといった様子で一記は体を起こしながら辺りを見回す。しかし、それに対して答える者はおらず、内装もモデルルームのようになっていたが誰かが住んでいたかのような気配はなく、一記は大きくため息をついた。
「……ダメだ、何もわからない。けど、少なくともここは快適そうだな。ベッドもフカフカだし、悪い環境に放り込まれたっていう感じでは無さそうだ」
一記が安心した様子で独り言ちていると、部屋のドアがゆっくりと開いた。すると、眠る直前に一記が遭遇した少女が入室してきたため、一記は驚きから思わず声を上げた。
「き、君は……!?」
「あ、お目覚めになったんですね。すみません、ろくに説明もせずにここへ連れてきてしまって」
申し訳なさそうに少女が言う中、一記は再び周囲を見回した。
「……もしかして、ここは君の家なのか?」
「家……とはちょっと違うかもしれません。私はここにお世話になってるだけですから」
「お世話に……?」
「はい。あ、そうだった……あの、今から私と一緒に来て頂けませんか? “博士”から字井さんが目覚めたら連れてきてほしいと言われていたんです」
「博士……何がなんだかわからないけど、とりあえずついていけば事情がわかるんだよな?」
その言葉に少女が頷くと、一記は小さく息をついてから自分の服の中に手を入れ、三角錐の形になった水晶を取り出した。
「字井さん、それは?」
「小さい頃に人から貰ったものなんだ。何か困ったらこれを握って、その時に浮かんだ考えの通りに動けば間違いはないだろうからって言われてさ」
「なるほど……それにしても、綺麗な水晶ですね。初めて見たはずなのになんだか懐かしいような感じがしてきます」
少女が不思議そうに言う中、一記は水晶を静かに握って目を瞑った。そして軽く頷くと、ベッドから立ち上がった。
「……行くよ。この水晶を握った時、ついていけば問題なさそうだって思ったから」
「わかりました。それじゃあこちらに」
「ああ」
一記は頷いた後、少女の後に続いて歩き始め、そのまま部屋を出た。部屋の外は無機質な雰囲気の廊下になっており、一記は物珍しそうに辺りを見回した。
「さっき博士とか言ってたけど……ここは研究所みたいなとこなのか?」
「そんな感じです。それで、私は博士の助手をさせてもらってます」
「なるほどな。そういえば俺の名前を知ってたみたいだけど、どうして知ってるんだ?」
「博士が調べたからですよ。漢字が無くなって以降、漢字に関する発言をしていた人を調べていたら貴方を見つけたんです」
「発言をしてたって言っても、両親との会話くらいだぞ? それでも調べたっていう事か?」
「そういう事です。あ、そろそろ博士のところに着きますよ」
少女がそう言う中で目の前には銀色の扉が見え始め、近づいていくと扉は自動でゆっくりと開き、一記達の視界にはコンピューターや椅子に座った白いボサボサ髪の人物が入ってきた。
「
「おお、そうか」
浦野博士は白衣をはためかせながら椅子を回転させると、メガネの奥の瞳を軽く細めながら話しかけた。
「初めまして、字井一記君。私は浦野
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