第2話 「二人の関係は?」
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「カレと……バンドを組む……?」
わなわな、と男子学生が震えながら復唱した。まるでこの世の終わりみたいな顔面蒼白な顔をしている。
おいおい、どうした? 酒を一気飲みしたから気持ち悪くなったのかな?
「そう、金吾とバンド組むんです! 私は楽器初心者だけど、彼が経験者なので教えてもらいながら」
「ふ、ふぅん……そうなんだ」
彼はどうしたのか、ソワソワ落ち着きなく俺と空李さんの間で視線を彷徨わせる。一体俺の何がそんなに気になるというのだ。
「えと……二人ってもしかして付き合ってる感じ?」
と、彼は藪から棒にそんなことを尋ねてきた。
付き合う? 俺と? 空李さんが?
少々の間を置いて俺と空李さんはポケッとした顔で見つめ合った。そして同時に吹き出したのだった。
「違う違う。俺と空李さんはただのお友達だよ」
「そうそう。元々は彼のバンドのファンで、色々あってやめちゃったから今年の春からバンド組んでもらうことにしたんです」
「ほっ。なーんだ、そういうことか」
と、彼はなぜか安堵の表情を見せたのだった。
はてな、どうして俺と空李さんが付き合ってるかなどと尋ねたのだろうか?
それはともかく、俺と空李さんは元を辿れば推しとファンの間柄。その後ひょんなことからお友達になり、この春からはバンド仲間となったのだ。
決して浮ついた色恋関係などではない。もっと面白いことをする、ワクワクする間柄なのだ!
「文化祭のステージに出る予定だから、応援してくださいね!」
「もちろん、応援するよ! あ、なんだったら俺も少しギター弾けるから教えてあげようか?」
「ありがとうございます。でも音楽のことは金吾にみっちり教えてもらう予定だから大丈夫です!」
「あ、そう……」
しょぼん、と肩を落とす何某君。
「へぇ、ギター弾けるんだ! エレキ? アコギ? どこのメーカーが好き? 俺この前バイト代
「あ、もうその話結構です」
なんだよ、それ!?
一緒にギターの話して盛り上がりたかったのに!
ギターのこと熱く語りたかったのに!
「えへへ、文化祭楽しみだなぁ。今はとにかくステージに向けて練習しないと。金吾、レッスンお願いね!」
「もちろんです。一緒に頑張りましょうね」
滾る想いを受け止め、俺は身が引き締まる。
以前のバンド『リコネス』は後味の悪い終わり方をしたが悔いても仕方がない。それよりも今は空李さんとの新しいバンドで頭がいっぱいだった。
「毎日練習! 目標一日六時間!」
「気合い入ってますね!」
「土日は金吾の部屋で夜通しレッスンしてね!」
「承知しました! 寝かせませんから覚悟してくださいね!」
「(男の部屋で夜通し!?)」
「(本当に付き合ってないのか!?)」
「(ベッドで裸のセッションですね、分かります!)」
もちろん夜通しというのは冗談だ。最初から飛ばしてたら後がもたないから何事もほどほどにね。
と、交流会なのに二人だけの話題に没頭したせいで微妙な空気になってしまった。
「何お前らだけで盛り上がってんだよ」的な感じ。
うーん、これは良くないな。一応俺も上級生なわけだし、何か気の利いた挨拶で空気をほぐすとしよう。
「ともかく、そういうわけなので俺達(バンド)のことをよろしくお願いしますね!」
「「(シーン……)」」
あれ、なんでこんなにしらけるの?
ますます空気が変になってるよ。
特に男どもの顔がお通夜みたいになってるし。
*
「こはや〜ん、飲んでるぅ?」
心地良い喧騒に紛れ、浮ついた男の声が妙なあだ名を口にした。
「よぉ、
「そりゃなにより。呼んでやった甲斐があったってもんだよ。というわけでかんぱーい!」
「はいはい、かんぱーい」
コツンと奇妙な友人……と呼べるかどうか分からない男とドリンクの缶をぶつけ合う。
ここは学生の社交場。話しかけられれば愛想良く語り合い、仲を深めるのが唯一のルールだ。それが例えほぼ初対面なのに馴れ馴れしい男でも、だ。
まぁ、毛嫌いするような相手じゃないので構わないのだが。
「お、空李ちゃんも来てくれたんだね!」
「あはは……こ、こんばんは」
なんともわざとらしい話題の移し方をしおって。俺に話しかけたのは口実でお目当ては空李さんなのは最初から分かりきってるぞ、山科。
そして社交場にあってもよそよそしい空李さんの態度からして彼女からも見透かされてるぜ。
さて、なぜ俺と空李さんがアウェーの旅行サークルの新歓にやってきているのか。
きっかけは数日ほど遡る……。
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相変わらず誤解を招きやすい二人です(笑)
そして再び登場のチャラ男・山科君!
え、誰だったか思い出せない?
そんな人は第1章15話を読んで思い出してあげてください!
https://kakuyomu.jp/works/16817330662545387095/episodes/16817330663884846595
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いつも応援ありがとうございます!
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