第9話 も1つおまけ。介護中の気分転換。

このお話は、話せばえらく長くなるけれど、ごく手短にサクっと行きます。


母さんの最大の息抜き、それは当時入っていたシュー教のお泊まり施設に泊まって、瞑想みたいな事をしてゆっくりご飯を食べることだった。


母さんは、本屋で立ち読みしたとある新興宗教の本が心に残り、自分からその団体に入った。


教祖のビデオの話を聞いたり本を読んで、だんだんのめり込んでいったので、そのうちにその地域の支部のお役をもらうようになった。


最終的には、献金担当の支部トップ。年間のノルマをこなすために、まずは自分が率先して無茶な献金をする。

「自爆献金ね。そのうちに、ジィジとバァバも巻き込んで行ったのよ。盲目的に素直でアホな人間を献金担当にするとは、教団も賢いわな」

「で、シアワセになったのかと言えば、ぜーんぜん。内部の人間関係は悪いし、頑張って活動すればするほど、心は苦しくてヤーな気分になる。

それでも教祖の話はなかなか面白かった。

宇宙や他の星の'最新の'話も聞けるから、すごく狭い世界に閉じ込められているのに、どこよりも広大で最新の情報を知ったような錯覚に陥ったの。


バァバの昼夜問わずのシモの世話や食事、義理の両親に会いに行ったりでへとへとになった母さんは、バァバをショートステイに預けて、信仰を深めてきます、なーんて家族に言って一泊する。

「それは、至福の時だった。今でも、あそこで1人になれたから、生き延びられたと思う」と言っている。


結局、母さんはバァバが亡くなって、ジジババの財産も全部教団にあげちゃった。


でも、それからしばらくして、教祖が奥さんを追い出した経緯のビデオを見た時に、母さんは目が覚めた。

愛の大切さ、偉大さを説いてきた人が、別れた理由の1つに「奥さんの口の臭さ」を上げたのだ。

私は愕然とした。

教団員全員が見るビデオで、奥さんの身体的な弱点を、さも耐えがたい事のように、言うか?本気か?

私は「こりゃ、だめだ」と思い、すぐに内容証明郵便で教祖に退会の旨を伝えた。


「母さんは今、そのシュー教の事をどう思ってるの?」


「まあ、今でもそこに居て安らいでる人もいるし、それはそれでいいと思う。

献金しまくったのも、その時の私は良かれと思ってやってたし。


しかし、えらく高い授業料だってわ」

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しろまる目線 のりこ。 @tata-zeze

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