優しい貴方
消しゴム
第1話
「×××って基本誰にでも優しいよね。」
阿蘭那はそんな褒め言葉なんだか悪口なんだか分かりにくい台詞を吐いて、一世一代の勢いで告白した僕をフった。彼女は申し訳程度に「別にそれがダメって言ってる訳じゃないから」と付け足し、「そんじゃまた明日ね」となにも無かったかのように去っていった。
告白という一大イベントを(非常に残念ながら失敗に)終えた僕は、放心しながらも喉がカラカラなことに気づき、とぼとぼと体育館の入り口にある自販機に向かった。凹む僕の気持ちとは正反対にチカチカと点滅がやかましい自販機の前に突っ立って思考を整理する。僕は阿蘭那に振られたが、どうやら彼女は明日からも私を友人として扱ってくれるらしい。
「バシッ!」
落胆と安堵がないまぜになって気が抜けていた僕は、不意に自身の肩を襲った強い衝撃に思わず振り返る。
「痛ってぇn…ってなんだサクか…」
いきなり肩をぶっ叩いてきた犯人が10年近い付き合いになる桜だと気づいた僕は、仕返しとばかりに桜の両こめかみにグリグリと指を押し込んだ。
「元気なさそーだったからテンション上げてやろうと思ったのに!」などとのたまいながら僕の反転攻勢を難なく振り払った桜に、「ちょっと面白い話聞かせてあげるからさ」
とカフェオレを奢らせる。いつぶりか共に帰途につく2人を遠巻きに眺めながら、
「そういうとこよ…」
と溜息がちに呟いたのは、
─既に学校を離れたはずの─
阿蘭那だった(完)。
優しい貴方 消しゴム @ke456monkey
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