あとがきの様なもの

 拙作「遥天の使者」は25年以上前から考案してきた作品です。

 いつか小説として公開出来たらいいなと思っていましたが、PCが普及し、インターネットが当たり前の世界となり、誰でも簡単に自分の作った作品を世に出す事が出来るようにもなりました。

 このような場所を提供してくださった角川さんには感謝しています。


 ──SF作品を創る理由──


 私がSF作品を作る理由といえば、宇宙戦艦ヤマトや2001年宇宙の旅などを見てハマった事を切っ掛けに、科学の世界にのめり込んで行ったからというのが理由です。

 小学生の時に、天体望遠鏡を買ってもらって星ばかり見ていたというのもあるかもしれません。

 偏りはありますが様々なSF作品を小説や映画で触れて、都度、その難解な表現にワクワクした一方で、これって相当人を選ぶジャンルだな、とも感じました。

 本作、遥天の使者が何処かの誰かにとって、SFが好きになる切っ掛けになってくれるといいなと考え、難解な専門的な表現を取り入れつつも可能な限り解りやすくして専門用語を調べなくても読めるようにし、余計な言葉遊びも減らして物語の流れがテンポよく入ってくるよう、直球の作文をするようにしています。


 ──遥天の使者という作品の特徴について──


 本作では現実だったらこうなる、という解釈を最大限に盛り込んで、リアル優先で表現する努力をしました。

 ですので、逆にドラマチックな演出を作り出すことが難しく、とても苦労しました。この辺りは私の技量が足りないところです。

 狭いシートに固定されたままの登場人物ばかりでは、どう頑張っても舞台演劇のような動きは取れませんし、碌に対話の成り立たないような孤独な宇宙空間でのシーンが多いので、登場人物の個性がぶつかり合う群像劇の様にはなりにくいし、体力勝負の派手なアクションなんてのもありません。

 いざ戦闘になれば、レーザー兵器は一瞬で命中しますし、ワープなんて便利な移動手段もありません。

 ダメージを受ければ一発で爆死というのが当り前の世界です。

 それから世界人口や政治、経済などの背景も考えると、地球周辺の領域だけでみれば、何万隻もの宇宙戦艦を並べるというのも有り得ない話でしょうから、艦隊戦をしても相当地味な表現になってしまいます。

 もちろん本作にもエンターテインメントはありますが、極端にリアル志向に振ってみたらどうなるか、というのがやってみたい事だったので、その点は作者としての我儘を通させて頂きました。

 この辺りが本作の最大の特徴というか特色となっているものです。

 経緯は別にして、天文分野の文献や、資料を読みつつ、計算機を片手に小説を書く。これはとても楽しかったです。


 ──遥天の使者という物語のテーマ── ※ネタばれ注意


 本作は遥かな時間を超えた親子の絆や想いがテーマではありますが、根底に流れるものは作者がエンジニアとして経験した失敗や成功の体験を振り返ったものでもあるのです。

 様々な体験を通して、後悔や反省、改善やリスクへの取り組み、関わった人との交流もアレンジして物語を構成し、そこへ宇宙戦争や天文現象を絡めて創り上げました。

 構想からプロットを作るまで、ゆうに8年以上は温めてきました。

 私は和製ホラーが大好きで、自分の作品にもやりようの無い気持ちになるバッドエンドをいつも考えてしまうのですが、今回は趣向を変え、少しでも希望を持てる物語にしようと考えました。

 実際に書き始めてしばらくは、バッドエンドにしたいという考えは残っていたのですがソリル編でやってしまったので考えを変えました。

 結果としてはスッキリした終わり方になったので、むしろ良かったなと思っています。


 物語の長さについて、長々と続けるより、話のテンポを考えてコンパクトにすることを優先したので、説明しきれていない部分が多かったり、色々な側面で消化不良があるのを感じています。

 これは考えて決めたことなので後悔はしていませんが、心残りはあります。

 不足に感じている部分については、今後、外伝という形で補っていけたらと思っています。


 最後に、拙い作品を読んでくれた皆様へ。

 遥天の使者は楽しめて頂けたでしょうか。

 こんな作品があったと、心のどこかに書き留めて頂けたら幸いです。


 2023.1 堀井啓二

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

遥天の使者 設定/解説 堀井 啓二 @kj103103zx

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ