問答
第1話
これは、1999年5月20日の出来事である。
朝、テレビを見ていると隣の県の交番が襲撃されたというニュースがやっていた。しかし、隣の県で起こったことだったので私は気にも留めず、学校に向かった。
昼休み。トイレに入っているとパンッという音が聞こえた。その後、大勢の生徒の悲鳴が聞こえ、またパンッ、パンッという音が鳴り響いた。そこで私はこれが銃声であると確信した。早く逃げなくては。でも、外に出て犯人と鉢合わせるのは怖い。だから、私は事態が収まるまでトイレの中に隠れることにした。
5分ぐらいが経過したその時、外から足音が聞こえてきた。その足音は、私が入っているトイレの前で止まった。そして、ドアの外からこんな声が聞こえてきた。
「私は警察だよ。犯人はもう捕まえたから安心して出て来なさい」
「……本当ですか?」
もしかしたら、この人は警察を装った犯人なのかもしれない。だから、私はこう質問した。
「それなら、あなたの名前と階級を教えてください」
「私は佐藤研一。階級は巡査長だよ」
なかなかの答えだ。警察の興味のない人なら巡査、警部ぐらいしか知らないはず。でも、私はまだ確信が持てなくて、また質問をした。
「あなたの管轄の警察署はどこですか?」
「上原警察署だよ」
これも正しい。ここの管轄は上原警察署だ。
「佐藤巡査長は何課の人ですか?」
「地域課に所属している」
「地域課の課長の名前は?」
なぜ私がこんな質問をしたのかというと、私の父が上原警察署の地域課で課長をしていたからだ。
「坂本順一地域課長」
この質問を答えられたということは、この人は絶対に警察官だ。だから、私は安心してドアを開けた。すると、そこには迷彩服姿の男が立っており、男は私の左胸に拳銃を突き付けると、引き金を引いた。
「……な、んで?」
私は傷口を抑えながら、声を絞り出した。
「君さぁ、質問して俺が本当に警察官かどうか確かめようと思ってたでしょ? でも残念だったね。俺、元警察官なんだ」
問答 @hanashiro_himeka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます