3.なんだか納得いかないので、寄り道・気晴らしをしてから家に帰ると。

 どたどたどたどたっ!


 だだだだだっ!


「おかえりなさいっ! あなたさまっ! わうっ、わっふふん!」


「……びっくりした顔をして、どうなさったんですか? 鍵が開いてた、どうして部屋に……? 合鍵なら、ご両親から預かっていますよ?」


「そんなことよりっ! 掃除、洗濯、ぜんぶ終わらせておきました! ほめて! ほめてください! なでなでを! 要求します!」


「え……?」


「なでて、くださらないんですか……?」


「………………」


「……えへへ。そうは言っても、やっぱりなでてくださるんですね。優しくて大きな手のひら」


「だいすき、です」


「……疲れた顔をしている? クマもできてる、ですか?」


「まほめさんと今日会ったけど、同じような顔をしていた?」


「……あー。えと、その、ええと」


「寝不足、なんです。昨日は久しぶりにあなたさまと出会えて、嬉しさからからよく眠れず……ですが、体調が悪いわけではありませんので!」


「もっとなでていただいたら、すっかり元気になると思います! だからほら、ほら!」


「はい? 耳? どう見ても作り物だって、さわったらよくわかるって?」


「……はっ!!!!?」


「そ、それ以上はおさわり禁止ですっ! NGですっ! 確認させないようにしていたのに……策士……っ!」


「油断もスキもないですね。なでなでタイムは終了ですよ、もう。リビングにお夕飯を用意していますから、着替え終わったらそちらに……はい? なんですか?」


「なんだか背中が……おしりの辺りがふくらんでる?」


「……ああ。それはしっぽですね。耳としっぽはいぬの、ポメラニアンのアイデンティティですので」


「なんですかその顔は。それも作り物だろうって、そう書いてありますよ」


「そんなに気になるのなら、スカートをめくって確かめてみてください。さあ、さあ、さあ!」


「……どうしてまた、顔を赤くしているんですか?」


「そういうことは、しちゃいけない? にんげんは、特に女の子は、他人におしりを見せないもの……?」


「じゃあ、触って確認なさいますか? そうすればおしりは見えませんし、なんの問題もありませんよね?」


「もうわかったって、なにもわかっていませんよね!? わたしにも意地があります、こうなったら、触っていただけるまでここからテコでも動きませんから! つまり……確かめるまで、お夕飯は抜き、です!」


「あ……でも……」


「耳ほどではありませんが、敏感な部分なので……」


「やさしく、おねがいします、ね……?」


「きゃんっ、ひうっ」


「いえっ、その、びっくりしただけで……嫌とかではなくて……」


「あの、なんだかくすぐったくて……あっ、はぁっ、ふぅ……ふぅ……」


「やっぱり……触りかた、やさしいです……なんだか気持ちよくて……ここちよくて……」


「……やっ、ぴゃあっ!?」


「お、おしりを触りましたね!? 子いぬとはいえ女の子、おしりを触るなんて……!」


「そっちから押しつけてきたって、そんなことありませんよ! とにかく! ちゃんとふかふかのしっぽがあるって、わかりましたよね!? わたしはあのときのポメラニアンだって、ご納得なさいましたね!?」


「そう。断じてわたしはあなたの幼なじみである……まほめさんではありませんから!」

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