2.放課後の教室で、本人に直接話を聞いてみた。
「急に呼び出したりして、いったいなんの話なの? この高校に入ってから、私と話そうともしなかったくせに。昔はあんなに、キミのほうから私にくっついてきてたっていうのにね」
「そんなことない? ううん、絶対そうだった! アルバムの写真とか、どこを見てもキミがいるじゃない。なのに今年に入ってからは、ぜんぜん」
「……クラスが違ったから? 別に避けてたわけじゃない? はあ……まあいいわ、そういうことにしておいてあげる」
「で、用件はなに? 今日は外せない用事があるから、早く帰りたいんだけど」
「ううん、すごく急いでるわけじゃないわ。ペットをね、飼うことになったの。だから色々と、必要なものの手配があって。何時間も話し込むんじゃなきゃ問題ないわよ」
「それで、なにが聞きたいの? そのために呼び出したんでしょう?」
「……は? はあぁ?」
「子犬? 私が? 犬の耳を着けて? 恩返しに来たって?」
「抱きついてきて、むっ、胸を押し付けてきたぁ!? すんすんと、匂いをかいで……!?」
「……しばらく話をしてない間に、現実と妄想の区別がつけられなくなってたなんて。マンガとかアニメとか、そういえば好きだったものね」
「……えぇ? 本気で言ってる、の?」
「………………」
「ちょっとこっち来て。しゃがんで、おでこを出して」
「熱はない……と思うけど、手のひらじゃわかりづらいわね。ほら、もっと近くに寄って!」
「……熱は……なさそうね……でも……もうすこし……」
「って、きゃあっ!? ちょっと、急に離れないの! もう、びっくりしたじゃない」
「びっくりしたのはこっちだ? おでことおでこを合わせて、熱を測ってあげたのに。高熱が出ていて、変な夢を見ているんじゃないかって。心配してあげたのよ?」
「……私のほうが心配? 疲れた顔をしてるし、目の下にクマができていて、なんだか顔も赤いから?」
「………………誰が、ぶさいくだって?」
「言ってない? ああそう、ならいいけど」
「疲れているというか、少し寝不足なだけ。ペットのことで色々調べてて、それで夜更かししちゃって」
「ん? そう、飼うのは子犬よ。心構えとかしつけの方法とか、知らないことがたくさんあって。命を預かることになるんだし、中途半端な気持ちはよくないから」
「なにもすごいことなんてないわよ。飼い主として、当然の責任でしょう? ペットだって、りっぱな家族の一員なの。幸せになれるように最善を尽くすのは、当然のことじゃない」
「……でも」
「褒めてくれたのは、ありがと」
「そういうことだから、私はそろそろ帰るわね。そっちもその……ええと……」
「……治るといいわね、も・う・そ・う・へ・き」
「あははっ! それじゃあ、ばいばい! またねっ!」
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