非対称

 僕の作った世界は。


 僕が僕でいられる世界は。


 未だに、間違っていないみたいだ。


 ばれていないみたいだ。




 僕のすねには傷跡があって、


 おびただしい数の切り傷があって、


 それらはみな僕の間隙を衝こうとした君たちの付けた傷跡で。


 必ずと言っていい。


 左足のすねに、


 深く、深く刻まれている。




 馬鹿みたいだ。


 対称を信奉する君たちの、


 均衡と平等と、


 あるいは競争への思索と。


 それらはみな、


 こんなにも非対称で、


 僕のことを殺そうとしてくる。




 君へ。


 コンパスで丸を描けよ。


 二つだけでいい。


 そして、その丸を描く線を、


 互いに重ね合わせて、交点と交点を結ぶかどうかは、


 すべて任せた。




 僕は、もう君たちの面倒を見ていられない。

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非対称 みこまる @thakajo

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