問:「バベルの図書館」が現実に存在すれば、全長何メートルであるか。
黒渕めがね
「図書館」が直線的である場合。
※注意書き
・掛け算は*で表します。
・2の3乗のようなベキは、2^{3}のようにハット記号^で表します。
・=は、「等しい」という通常の意味でも使いますが、四捨五入をした大まかな値である場合にも使っています。区別していないため文脈から判断する必要があります。
・logは、底を10とした対数であるとします。
答: 約2*10^{1834094} m(2*10^{1834078}光年)
解説:『バベルの図書館』の本文によれば、本一冊は410ページあり、各ページは40行、各行は80文字から成る。一文字あたりの横幅を1mm、縦幅を2mmとし、行間を1mmとする。また各ページの上下左右の余白を5mmとする。
これより本の横幅は1*80+5*2=90mm、縦幅は3*40+5*2=130mmである。
次に本は両面印刷であるとし、紙205枚分の厚みは9mmとする。また表紙はソフトカバーであるとし、表側と裏側の表紙の厚みの合計を1mmとする。よって本の厚さは10mmである。(※註1)
本文によれば、図書館の各部屋は六角形であり、そのうちの4辺には本棚が一つずつ置かれ、残る2辺のうち1辺はホールに繋がっている。ホールには上階と下階をつなぐ階段、トイレと睡眠用のスペースが設けられている。各本棚は5段であり、一段には32冊を並べて収納できる。
ここで本棚の木材の厚みは、縦板も横板も全て15mmとする。また本棚に収められた本に指がかけられるよう、10mmの空間が本の上面と棚板の間にあるとする。ここから本棚の横の長さは10*32+15*2=350mmであり、縦の長さは140*5+15*6=790mmである。
床の厚みを50mmとし、本棚と天井の間に隙間はないとすれば、床面から次のフロアの床面までの高さは50+790=840mmである。(※註2)
本文によると、使われる文字は25種類で、すべての文字が一致する本は存在しない(「同じ本は二冊ない」)。そして、存在しうる全ての本が図書館に収められていれば、本の総数は25^{410*80*40}=2*10^{1834097}冊である。(※註3)
図書館が六角形の部屋を垂直に積み上げた塔であるなら、各フロアには32*5*4=640冊の本があるので、図書館の長さLはL=25^{410*80*40}*0.79/640 mである。
log(L)=410*80*40*log(25)+log(0.79)-log(640)=1834094.383から、L=10^{1834094.383}=2.4*10^{1834094}mである。1光年を9.46*10^{15}m(Wikipedia『光年』参照)とすると、L=2.5*10^{1834078}光年である。ゼロが180万個以上つづく!
Wikipedia『観測可能な宇宙』によると、人が見える宇宙の範囲は、直径が930億光年の球の内側だけである。よって、この図書館を収めるのに必要な空間を確保するには、2.5*10^{1834078}/9.3*10^{10}=2.6*10^{1834067}個の観測可能な宇宙を横一列に並べなければならない。
またその逆数が9.3*10^{10}/2.5*10^{1834078}=3.7*10^{-1834068}であるから、人間が中身を読める本は、全体の3.7*10^{-1834066}%である。よってほとんどの本は、読みに行くこともできない。(※註4)
最後に、図書館に収められた全ての本の体積Vを調べる。本一冊の体積は0.13*0.01*0.009=1.17*10^{-5}m^3のため、V=1.17*10^{-5}*25^{410*80*40}m^3である。log(V)=log(1.17)-5+410*80*40*log25=1834092.36であるから、V=10^{1834092.36}=2.3*10^{1834092}m^3である。
Wikipedia『観測可能な宇宙』によれば、観測可能な宇宙の体積は3*10^{80}m^3と見積もられている。V/3*10^{80}m^3=7*10^{1834011}から、全ての本を本棚を使わずに隙間なく並べたとしても、7*10^{1834011}個の観測可能な宇宙がなければ、図書館にある全ての本を収納できない。そのため曲がった図書館(※註5)や、各部屋を3次元的に並べた立体的な図書館など、今回とは構造が異なる図書館を考えたとしても、最低でもこれだけの数の観測可能な宇宙がないと、その図書館を建てるのに必要な空間を確保できない。(※註6)
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註1:これらの数値は、手元の英和辞典のサイズを参考にした。文字も小さく、かなりコンパクトな本だと感じるかもしれない。
註2:天井が低いので、ほふく前進で常に生活しないといけない。
註3:バベルの図書館を体験できるサイトがある。https://libraryofbabel.info(Wikipedia『バベルの図書館』も参考になる。)
サイトでは、図書館から適当に選んだ一冊を読むことができる。そしてほぼ全ての場合、アルファベットが支離滅裂に並んだ読めない本が選ばれることが体験できる。
本文の「図書館は無限であり周期的である」の「周期的」とは、たとえ図書館のどのフロアに行けたとしても、そこにある本が読めないことを表現しているのではないか。そのため自分がいる場所から遠く離れたフロアにいる司書も、自分と同じような読めない苦しみを感じていると予想でき、そんな彼らに共感するのではないか。(「わたしの孤独も華やぐのである」。)
図書館は、作成が難しいと言われる、完璧な乱数製造器かもしれない。(「おなじ書物がおなじ無秩序さでくり返し現れること」。ただし、この一文での「おなじ書物」とは、全ての文字が一致する本ではなく、製本が同じ本と捉えた。)
註4:全冊数に対してあまりに少ない冊数しか読めないので、本当に図書館には存在しうる本が全て収められているのか確かめられないだろう。
註5:今見ている風景は、曲がっている図書館の一部分を切り取って見ているだけの可能性もある。例えば図書館が弦のように振動していて、波長が観測可能な宇宙10個分の長さであるなら、図書館の住人は、図書館が曲がっていることに気づけるだろうか。
註6:今回は、各部屋が六角形である一番シンプルな間取りを扱ったが、他にも様々な間取りが考えられる。また各部屋を二次元的に隙間なく並べる場合にも、複数の並べ方が考えられる。間取りなどについては以下が参考になる。https://libraryofbabel.info/theory.html
問:「バベルの図書館」が現実に存在すれば、全長何メートルであるか。 黒渕めがね @_megane_kurobuchi
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