第58話 迷い

【はると、全て聞いたよね?ユキから】


【はい、全てを。でも安心しましたよ】


るいさん、しょんぼり…


【さっきはごめん。あのことで辞めちゃったから。というか全て私が辞めることに繋がってる】


【いいんじゃないですか?いずれにせよ、るいさん残るのは危険を背負うことになっていたから。いくら能力あるとか耐性あるとか言ってもね】


【喫茶店、ずっとやりたかったから。しかもさ、ユキも賛成してくれて、嬉しかったなー。私にはここが何よりも幸せを感じれる場所】


ショートカットの似合う素敵な笑顔のるいさん。


 るいさんの彼氏羨ましいねー。それに、るいさん幸せそうだ。


 それなのに、俺は向いてない仕事して、りなの足ひっぱって、何やってんだろ。虚しいな…


【はると?悩み事あるの?】


るいさん、意外と鋭いね…


【無いですよ、それじゃ、俺帰ります】


【ちょっと待って。これ、バイト料。ありがとう。本当に助かった】


【そんなバイト料なんてもらえないです】


【駄目、受け取って。少ないけど】


貰っていいのかな?


【ありがとうございます。また来ます、みさを連れて休日にでも。ユキさんは?売上計算かな?じゃ、よろしく伝えてください。では】


【今日は助かったよ。ありがとう、はると】


楽しかったな、少し気持ちが晴れたよ。


海沿いに少し歩いて駅に帰ろう。波の音。いいね。


暫く歩いて、駅に着くと、


【はるとくーん、待ってー】


ユキさん、見送りですか。ここまで来てくれたの?


【はぁー、はぁー、疲れた。やっと見つけた。もうシャワー浴びたのに汗だくだよ】


【ユキさん、どうしたんですか?】


【はるとくん、何があったの?】


【何がって、何もないですよ】


【こっち見て!嘘つかない!正直に!】


ユキさん、始めてだね、こんな強い口調…


【疲れちゃって、心配かけてすみません】


【ごめんね、はるとくん生き生きしてたから、助かるし、ごめんラストまでお願いしちゃって、でも、それだけじゃないでしょ?】


見抜かれてるな、俺。


 りなの秘書として、頑張ってきたけど、みさに会えると思って頑張ってきたけど、出張じゃ仕方ないけど、なんかモヤモヤする。


 緊張の糸が切れる、って言うのかな?ユキさんは何でこんなにも優しく包んでくれるんだろう?


【はるとくん?座ろうか?】


【はい…】


ちょっと目眩がするな。疲れたかな?


【はるとくん!はるとくん!】


ユキさん、どうしたの?何で慌ててるの?


おっ、目の前が真っ暗だ。不思議と心地よい…


誰かが耳元で…よく聞こえないや。



………………第ニ章(完)………………


※第三章に続きます。引き続きご愛読の程よろしくお願いします。








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