第3話婚約者2


「おい!ルーナ助けろ」


 背後で騒いでいますが、知りません。


「聞こえないのか!? おい!婚約者の俺が辱めを受けてるんだぞ!!」


 もう婚約者ではないでしょう。

 自分から婚約解消を宣言しておいて図々しい。


「な、なんだ?俺を何処に連れて行く気だ!?」


 何処に連れて行くも何も王宮からたたき出されるだけです。そんな事も理解できないのでしょうか?

 ご自分が部外者だと解っていませんの?


「やめろ!!俺は伯爵だぞ!!!」


 違います。です。爵位を継承した訳でもないのに。何を言っているのでしょう。呆れてしまいますわ。それともで捕まりたいのでしょうか?


「貴様ら!こんな真似してタダで済むと思っているのか!!父上と母上が黙ってないぞ!!貴様ら全員打ち首だ!!」


 アホです。

 本物のアホです。

 伯爵家にそんな権利がある訳ないでしょう。

 バカですか。

 いいえ、アホでバカな男ですわ。

 自分の言っている意味を理解していないのでしょう。

 自国の法律を分かってないのでは?

 

 国王陛下でさえ議会の承認なくして死刑などできません。まったく、貴族としての常識が欠けているとは思っていましたが此処まで酷いとは……。伯爵家は一人息子の教育に失敗しましたわね。まぁ、知っていましたわ。


「よせ!放せ!あがっ!ぐぐっ……」


 やっと静かになりました。

 どうやら何かで口を塞がれたようですわ。自業自得です。話の分からない野生動物を相手にできませんもの。護衛の判断は実に的確ですわ。それに、王宮に来ている段階で身元確認は終わっていますからね。初犯ということもありますし、厳重注意くらいで直ぐに帰れますわよ。もっとも、次に仕出かしたらどうなるのかは分かりませんけどね。


 それよりも、上司に無理を言って時間を割いていただいた理由がコレとは。報告書を上げるこちらの身にもなって欲しいものです。


 こんなバカバカしい理由をだなんて。

 



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