第2話婚約者1
「おじ様達はご承知なのですか?」
「当たり前だろ」
更にありえない事実が発覚しました。
息子の不貞を了承したというのですから。
伯爵家の当主としてどうなのかしら?貴族としてあり得ない事です。
ですが――
「それなら、私に否はありません」
相手の女性に熨斗つけてくれてやりましょう。ニッコリと微笑んで言うと、何故かテオドールは不機嫌な顔になりましたわ。何故でしょう。
「……それだけかよ? 他に言う事があるんじゃないのか?」
「? 特にありませんけど? しいて言うのなら、私のおじい様にお知らせしなければならないことでしょうか?」
「それだけか?」
本当に何でしょう?
他に何かあったでしょうか?
ああ!
「今後について詳しい話し合いが必要ですから、両家で話し合いの場を設けるだけですわね」
主に
相手の女性からも絞れるだけ搾り取ってやりますわ!
それ以外ありません。
あら?
どうしたのでしょう。
テオドールの顔は百面相してます。
つい笑いそうになりましたわ。いけないいけない、笑ったら機嫌が悪くなって面倒な事になるでしょうね。気を付けなければ。ここはさっさと追い出すに限ります。
「ルーナはさ、昔からそうだよな。事務的っていうか……無駄な事は一切しないっていうかさ」
「……そうでしょうか?」
「そうだ!俺との婚約だって領地にいってばかりだったじゃないか!!」
「コーネル伯爵家は領地持ちの貴族。次の当主夫人として当然の事だと認識していましたわ」
「伯爵家の領地なんて田舎じゃないか!!しかも領地でする事と言ったら書類とにらめっこだった!!!」
この男は一体何を言っているのでしょう。
当然でしょう。
「伯爵領の仕事ですよ?元々、貴男に任されていた物です。それを期限ぎりぎりで泣きついてきたのは貴男です。私が『当主代行の“代行”』を務めて仕事を代わって終わらせただけです。感謝される事はあっても文句を言われる覚えはありません」
「~~~っ……そうやって『自分は一人で何でもできます』って顔が気に入らないんだ!ちょっとばかし頭が良いからって人を見下して!俺に説教して!!うんざりだ!!!」
「テオドール、訂正して頂戴」
「なに?」
「ちょっとではないわ。大分頭は良い方よ」
なにしろ、最難関大学を首席で卒業した身ですもの。それもスキップして。文官としてもエリートコースを邁進している私が「ちょっと」な訳ありませんわ。そんなことを言っては私に負けた方々に失礼でしょう。
「な、なんだと!!!」
急に激昂したテオドールに控えていた護衛が剣に手を置くのが分かりました。
彼らは王宮の騎士。
私への罵詈雑言を並べ立てるのはいいけれど、テオドールの様子からして、この部屋に私以外の人間がいる事などスッカリ忘れているのではないかしら。一つの事に夢中になると他が一切目に入らないところは幼い頃から変わりませんわ。何度直すように諭した事か。結局直りませんでしたけど。もう彼の尻拭いをしなくて済むというのなら婚約解消など安いものです。
その後もテオドールの聞くに堪えない暴言が続き、「これ以上の侮辱は我が家の名誉にも関わります」と言い放ち会議室を後にしました。何やら叫ぶ声が聞こえてきます。護衛達も彼の言動には目に余ったのでしょう。テオドールは護衛に連行されていきます。
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