プロジェクト・アポトーシス
亜未田久志
代償‐エネルギー‐
日本では「
こと
友人の
黒い黒い身体、異形の体躯、裂けた口から滴る涎、人ならざる者、
「智則!?」
「ここの時間は俺が稼ぐ、だから逃げろ星弥」
――アポトーシス:ラフメイカー起動。
そこに現れたのは巨大な空間の歪み。
それは念動力によって生み出された不可視の刃だった。
目の前で友人が命を代償に戦っている。
何も出来ない無力さに、打ちひしがれる星弥。
「智則、俺」
「いいから逃げろって!」
「でも」
「あーもう、役立たずは帰れって言ってんの!」
敵を斬っては捨て、斬っては捨てしている智則の足手まといにしか自分はなれなかったという悔やみに陥る。
役立たずという言葉も自分を遠ざけるための優しい言葉。
だけど、そこで一際、巨大な征服者、個体名、
この街では有り得ないことだ。
満身創痍の友人を見て星弥は一歩も動けずにいた。
戦闘が終わるころ、残るは王武のみになったところで、智則の命が尽きた。正確にはアポトーシス器官に回せるだけのリソースが無くなった、残りは己の生命維持にしか使えない。
思わず、智則のところに駆け寄る、
「智則、智則! しっかりしろよ」
「……お前、まだいたのか、逃げろって言ったのに……」
「智則を置いていけるかよ!」
「ふぅー、じゃあさ、星弥、悪いんだけど、俺の代わりに王武、狩ってくれねぇか」
意味を分かりかねた星弥、智則は己の心臓に腕を突き込む。その凶行に、驚く。
「なにしてんだお前!?」
「アポトーシスって外付け器官だから、簡単に他人に移植出来るんだ、俺の『ラフメイカー』に星弥が適合出来るか分かんないけど、そんときゃそんときで、悪いな」
そうして渡された正十二面体の結晶、この器官がアポトーシス。
死にそうな友人を前に涙ながらにそれを受け取る。
「笑ってくれよ、悲しいだろ」
「どうすれば使えるんだ」
「胸に入れ込んで、こう唱えろ、アポトーシス:ラフメイカー起動ってな」
言われた通りにする。
すると星弥の手に握られたのは可視化された物理剣だった。
王武はそこまで迫っている。アポトーシスにより極限まで高められた身体能力で王武の頭を斬りつける。
頭から血飛沫を上げる王武、それはゆっくりと絶命する。
そして振り返った友人もまた息絶え、亡骸となっていた。
独り残された少年は、手に握り込んだ剣に涙を零し、こう呟いた。
「一人にするなよ、笑えないだろ」
しかし、この時、星弥はまだ分かっていなかった。
この力が如何に危険で、今、世界に何が起こっているのかを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます