第4話 推しのヒロイン論争

俺と先輩は五月病という謎の病にかかるこの季節に、二人でそんなかけらもなく、熱心に討論を行っていた。

俺たちは、某ライトノベルのヒロインの中で誰が一番かわいいかということを話していた。

「成、何でわからないんだ。普段が何も考えてなさそうだけど、ふとしたときに助けてくれるヒロインが一番健気でかわいいだろ。」

「違いますよ。一番かわいいのは、いつもはクールぶっているのに、すこしの出来事でコロッと表情変えるヒロインが一番かわいいんですよ。」

というように、この討論は平行線なのだ。

「健気!」

「クール系!」

先輩も頑固だな、よし分かった。

「先輩こうしましょう、自分の思うヒロインの行動や言動を相手に披露するというのはどうですか?」

「中々面白そうだな。よし、それをやってみよう。」

よし、先輩が乗ってきた。

「まず、俺からしますね。」

よし、まず声を裏声にして、

「おい、後輩。何か困ったことはないか。」

「プッ、クフフフ。何よ、その声は何なんだよ。しかも、成の中のクールってそんな感じなのかよ。もっと、クールっていうのは、物静かな感じじゃないのかよ。」

「仕方がないじゃないですか、よりリアルを追求するとこうなるんですよ。」

さすがに、少し恥ずかしい。

「あと、俺の中ではクール系っていうのは、こんな感じなんですよ。」

「はー。分かった、分かったよ。続けてくれ。」

成はなかなか変わった感性をしているんだな。

「続きをしますよ。何か困ったことはない?」

「そこからなんだな。私ちょっと勉強苦手で分からないところがあって、」

「見せて、ここはね、こうやるといい。」

「なるほど、ありがとうございます!」

俺は、少し恥ずかしながら、言う。

「まー、分からないところがあったら、また教える。。」

こんなところだろう。

「どうでしたか?」

「ちょっと分からん。」

「なんで!」

先輩もなぜ分かってくれないんだろうか。変わった感性をしてらっしゃる。

「そんなそっけない感じより、グイグイ来てもらった方が、話しやすくないか?」

「なんも分かってないです。俺のはいいーんで、先輩のを見せてください。」

「なんだよ、その言い方。分かった。」

よし、ここは成に健気な女の子の良さを叩き込むか。

「先輩、全治3ヵ月ですけどリハビリ頑張ったら、間に合いますよ。」

先輩はそーいう設定なのか。

「いや、間に合わないだろう。だって、例え間に合ったとしてもぶっつけ本番になるぞ。」

「大丈夫ですよ、先輩なら。あと、私が、全力でサポートします。」

そう言うと、先輩が顔を近づけてくる。

これは、やばい。

「いや、無理だろ。」

「おい、何が無理だよ!せっかく健気な後輩がサポートするっていってるのに!」

「いや、なんかムカついて。」

「ムカつくってなんだよ、そんな要素あったか。」

これは先輩が悪いと思う。

「だって、かわいかったんですよ。」

「やっぱりな、健気な子が一番かわいいんだよ。」

「違います、行動は全然だったのに、先輩がやったということでかわいいと思ったことにムカついたんです。」

これは、かなり恥ずかしい。

「えっ、ちょ、おい。」

夜月の顔がどんどん赤くなる。

「もう帰る!」

「先輩、どうしたんですか。」

成は夜月のあとを追いかける。

「お前の勝ちでいいから帰らせてくれ。」

そう言うと夜月は、帰って行った。

「やっぱり、クール系が一番だろ。」

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素直になれば、幸せになれるラブコメ さわい おくる @pitcher16033

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