第3話 終わる昼時

 目的地、王都へと辿り着く。


「聖女様からの紹介でーす。」


「お、これは。どうぞ、お入りください。」


 大きな城を中心に大きく広がるこの世界最大の国家。良き人、良き王、良き統治。長い歴史がありながら、衰退といった衰退も無く絶大な力を持っている。


 今は昼過ぎ、大通りは多くの人々で賑わいをみせている。俺は前回の村での反省で気付いた。盗むことは有効であると。


 ここには冒険者たちも揃っている。欲しい装備品などあまりないが、武器は質が高ければ高いだけ良い。あとは、何故か、腹が減ったから飯が欲しい~。


 向かう中心の城。道中、めぼしい物は取るようにしよう。


「ん!?」


 肉入手。美味いやん。


「あれ…財布ない…」


 誰かの財布…、20ドル程度…。少ねぇ…;;


「きゃっ!!」


 なんかの布…、いらねー。その辺に投げ捨てておく。派手だから高価なやつかと思った…。


 素人から盗むのは余裕だけど冒険者たちから盗むのリスキーだなぁ。俺はレベルが低いからやめとこ…。


 盗みながら走って、ようやく城前。正面には門番が二人立っている。俺は堂々と正面から行くぜ!


「お待ちください。何用ですか?予約は?身分は?」


「え?いつもは何も喋らずに城の中に直行で入れるじゃん!」


「はい?いえ、そんなことはないと思いますが…。」


 な、何故だ。バグか、うんバグだな!まぁいい、大丈夫だ。俺にはこれがある。


「これ、聖女様の紹介です!聖女様が森でピンチに陥っています!私にはどうすることも出来ず、助けを求めに来ました!」


「何!それは本当ですか!?聖女様はつい先刻、行方が分からなくなってしまったのです。」


「聖女様はこれを私には託し、逃がしてくれたのです!どうか、どうか…。」


 ◆


 入れました。


 うぇーい!


 城までやってきたのには理由がある。城の地下にはワープ石がある。むちゃくちゃ貴重らしいから王族くらいしか保持を許されていないらしい。走っていくには時間がかかるため、ショートカットを使う。


「あー広いし、部屋多いし、人目あるし、走ってただけなのに、中にいた兵士に追われてるし…。」


 無駄に広く、豪華な装飾が施されている廊下を走り地下を目指す。周りをキョロキョロと見回しながら走っていただけなのに場内の兵士に追われている。話しかけないとリアクションしないモブなんだから邪魔すんなよ。


「不審人物を発見!不審人物を発見!止まりなさい!!」


 これ以上は、足止めを食らいたくないんだ。早くに地下には行かなくちゃ…。とりあえず適当な部屋に飛び込むか…。


「っと!!」


 曲がり角を曲がった後に、近くの部屋に飛び込み、すぐさま扉を閉める。


「え?」


「…ん?」


 部屋の中には女が一人。金髪で、身をドレスに包んでいる。な、なるほど…


「キャッ…」


 ―――グサッ


 女に叫ばれる前に喉をナイフで刺し、声を潰す。口から大量の血を吐き、俺の片手と床が血に染る。


「はぁ、はぁ、良かった…。頸動脈を切れた…。あぶねー。」


 ここ刺せないと、普通に動けて回復魔法使って叫ばれるとかあるかもしれないからな。


 部屋の外からは誰かがこの部屋の前を過ぎる音。


「あっ!そういえば、あなた、王女様か!」


 …死んでる。まぁ、さすがに即死か。いや、こんなところで油を売っている場合じゃない。早く地下を目指さなくては…。


 いつもは地下への階段から向かうのだが、王族の部屋には緊急時の脱出経路だったりがあったりするイメージがある。ここには辿り着いたのは何かの縁だ。探してみるか。


「ふぅ…、スキル『復讐心』」


 ステータスを状況によって、倍化するスキルだ。現在は2倍。


 俺はこの部屋の全ての家具を破壊する。


「無駄にでかいベットの下は…無し!」


 次々!


「この机の裏とか…無い!」


 机の上に置いてあった家族写真?やヘッタクソな絵、日記みたいなやつなどが床に落ち、血に染る。


 まぁ、こうゆうのはだいたい本棚の裏とかか。


「あっ!あった!!ラッキー!!!」


 そこから出てくるのは地下へと続きそうな階段だ。光はなく、ただただ暗闇が広がっている。


 タイムと魔王が俺を待っている。急ぎ、階段の下に向かって飛び降りる。しばらくの浮遊感と落下感を経て……、


 ―――トンッ


 きたきたきたーー!テンション上がってきたァ!あと少しでクリアだーー!!


「そうそう、そうだよね。緊急時の脱出経路だろうから、降りた先にあるのは脱出用のワープ石だよね。」


 ワープ石を持ち、魔王城の前の座標を打ち込み、起動させる。直接、魔王の元に行くのは結界があるため難しい設定らしい。


 起動させると、ワープ石が震え始め、光を放出する。暗かった地下を光で満たしていく。


「よしっ、気合い入れよ!」


 ◆


【王女の日記】


 Date.―――


 最近、孤児院に通っている。何回か通っていると子供達も懐いてくれて嬉しい。それに可愛らしい絵もプレゼントしてくれた。大事に飾っておこう。


 Date.―――


 もう少しで誕生日だ。お城のみんなには感謝しかない。家族もとても優しくて、毎日がとても楽しい。こんな幸せな日々が続くようにこれからも頑張っていきたいな。


 Date.―――


 今年は、いつもに増して経済が上手く回っているらしい。魔界との交流が上手くいっているようだ。今代の魔王さんはとっても良い人?らしい。これからもっともっと良い世界になっていくんだろうな。


 Date.(今日の日付)


 予言によると、そろそろ勇者様が現れるらしい。どんな人なんだろう…?やっぱり優しくてかっこいい方だろうな。いつか会ってお話してみたいな!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 会えて良かったよね。

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