マシューパイセン

全身がゾワゾワ~~と冷たくなってゆく。


え?どこまでが仕込みだったの??


いや、そんなんどーでもいいわ、目的だよ目的!!!



 な ぜ そ ん な こ と を す る ?



「俺もその”炊きつけられ復讐に燃える一人”、という訳か」


自分の心をそのままコトバにしたかのような男の音声を耳にして、ホッケー部に殴り飛ばされたような衝撃に襲われ正気を取り戻した。


「マシューせんぱぁい!」


なんだこの子宮から飛び出したような媚び媚びフルスロットルのハマミの声音は・・・前世のライブ以来だぞ。


「失礼しました、中尉殿」


おっと、上官殿だった。

遅れてノロノロと立ち上がり、おざなりに敬礼する。


「あれだけの国民を殺しておいて・・・家だけは残るとはな」


なんだコイツ。

敵意全開じゃん。


視界のスミで、ハマミが僅かに体を震わせたのがわかる。


怯えているのか・・・こりゃルフィに貸しつくるチャンスだわ。


「家とその族達・・・私たちが許されたウラの経緯など、知りたくはございませんか?」


えっ・・・なんだこの股の間から出てんのかと錯覚するほどの熱い震え声は・・・怯えじゃない?欲情??



「また弄ぶつもりか。あの時のように」


あれ?パイセンも敵意全開のまま震えてるぞ。

相思相愛??


「弄ぶなど・・・先輩には知る権利・・・いえ、義務があるハズですわ。卑小な私たちがどれだけ小狡く、悪辣に人民を贄に捧げ生を永らえたのかを」


人民・・・解放軍・・・まさかミッドランドの策謀?!


「全てを知り、その憎悪を余す所なくわたくしへと注いで・・・じゃなくって叩きつけてください!・・・あの時のように!!」


ハマミはいつのまにか敬礼を下げ、なぜか胸を開け機能しないであろうブラだかキャミだかのフリフリボンランジェリーを晒し出していた。


「付き合いきれぬわ・・・この変態がッ!」


言い捨てると、踵を返し去ってゆくパイセン。


身内の前で罵倒してんじゃねーよ。

こりゃ後でお仕置きだわ・・・まずはハマミの傷心のカヴァーか。


「衆目の前でヘンタイは酷ぇな・・・ってハマミ、そんな震えるほど悔し・・・」


ええ・・・ウソだろ、なにイってんだコイツ・・・


「・・・マジかよ」


とろりと濡れた目が俺を向く。


「うん・・・軽くイッたわ・・・」


「うぇ、もうお嫁にいけないねあんた」


エンリカから心底軽蔑した、というような冷たい非難が出る。


おいやめろ、コイツにそれは刺さ・・・


「アッ―――――!!」


可聴域を超えてしまったのか、サスティンにあって音が消えるほどまでに圧を上げた絶叫が館内に轟き渡り、ハマミはその場で倒れた。


「うお、倒れやがった」


倒れたハマミの白いタイツが薄い金色()に染まってゆく。


「グッ、この匂いは・・・」


男子同輩が見てはいけない、と自粛ながら目を背ける。


「白目剥いて痙攣してやがる・・・勘弁してくれ」



女子同輩がハマミを守るように壁をつくり、男子を遠ざけてゆく。



「エンリカ、あんたのセクハラワードが原因だかんね」


「いやよ。マシュー中尉に変態と罵倒され失神、てことで救急要請する」


救急も大変だな・・・変態の下の世話か・・・


「あっ、意識あるみたい。なんか言ってるわよ・・・エッ?」



聞き取ろうと屈み込んだ女子の顔が一気に冷たく、冬空のように表情を無くしてゆく。



「なんだって?」



「・・・男子便所に投棄してくれ、だって」



幾秒かの空白の後、エンリカがツカツカと場に歩み寄り寄ってゆく。


そして倒れたハマミをゴミを見るような目で見降ろすと、冷たくも厳かに判決を下した。



「船外投棄ね」



「そうね」



おいおい、冷静になれ!

死ぬだろ!

聞き違いかもしれん、人事不詳なんだ、きっと。


俺ら男性は陣をはり、譫言を曖昧に喚きながら連行されてゆくハマミと刑の執行者となった女子との仲裁にあたったが、血の制裁に猛り狂った女子を止めること敵わずハマミは魚雷発射管に詰められ生身のまま船外へと投棄されていってしまった。



レスキューバブルに回収されたハマミは、おしっこが乾いたと笑っていた。




***


「マシューパイセン。・・・いや上官殿」


「候補生か。何用だ」


「あの面罵はないんじゃねーの?有体に言や殴りにきたんだけど」


「そうか。来るがよい」



ハナシがわかる上官で嬉しいぜ、と敵意全開で殴りかかる。

が、数発パンチを交換したあたりで白ける。


こいつ全然ノってこねえ。


「あんたハマミのなんだよ」


「もうよいのか?ならば、話は終わりだ」


パイセンは言い捨てると、口元から流れる血を拭い踵を返した。

呼び止めた時から微動だにしない表情のまま。


ちなみに俺は鼻血だよ。

白人補正効いてないよ!何やってんの!!


「・・・どうしても、とあらばグゴールでも漁るがよい。0079ギルベルト邸にて・・・でいくらでも出てこようぞ」


宇宙検索エンジンか。

微妙なもじりしやがって・・・


舌打ちして酒でも求めようと踵を返す。



「今の雄姿、ハマミ殿下へ送りましょうか?」



そこには前世でもさっぱりみないくらい型遅れとなったハンディ型カメラを構えたエンリカが二指を立てこちらに笑んでいた。


そのハンドサインは時代によって意味がコロコロ変わってるんだ、危険だぞ。




いや、俺が教えてしまったんだが・・・





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最後のうんちくはこちら↓の作品からパクってました!!!!!

「異邦人ダンジョンに潜る」https://kakuyomu.jp/works/1177354054883170654


目を瞑ると主人公が旅しためたくそ壮大な世界とツインエロフと物語が浮かんでくるんですが序盤に出てくるゼノビアてお姉さんがめちゃくちゃ魅力的でマジでブラウザの後ろに隠れながらテキスト表示してんじゃないかっつーくらい掴みどころありまくりつか掴むとこしかない(後略


20240514 微パクに修正

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