授業
前世でいや市民体育館ほどのスペースで俺たちは思い思いの場所にあるソファへ体を投げ出し天井のスクリーンを見ている。
そこには宇宙での小規模艦隊戦が繰り広げられていた。
三艦の宇宙巡洋艦vs単艦の航空母艦。
戦力差は圧倒的で、互いに撃墜は無いままではあるが空母側が圧されてゆく。
突如、巡洋艦が一隻、護衛リーゼもろとも消える。
そこからはほとんど間もなく二隻が消え、艦隊を失った先発リーゼ群は降伏。
室内が騒めくと共に明かりが点灯しスクリーンは消える。
部屋の隅のシミュレーションシェルのハッチが開き、ハマミがヒザをガクガクと砕けさせながら這い出てきた。
「以上が前大戦で全滅したラムダ艦隊の記録だ。ハマミ准尉、下がれ」
教官に答礼し、こちらに来る。
フラフラと歩み寄ると、俺とやる気なく寝そべっているエンリカの間にちょこんと座った。
差別的身内集団に帰巣する本能的な行動が、その姿形もあいまって何気にいとおしい。
「諸君も既知であろう地球では伝説的英雄となったナミエ名誉大佐の戦闘機動だが、注目すべきは太陽フレアや木製からの電磁気をジャマーとし遥か遠方の彗星のカゲを使った浸透強襲である。准尉も完璧に幻惑されていたのは見ての通りだ。作戦目標への接近は太陽、惑星、遊星などの位置関係や電磁的ソースを効果的に使うことが肝要。この事例はパイロット個人のひらめきによる行動だが、諸君らはロケーションのデータを緻密に組み立て作戦を立案できるよう努めねばならん。解散」
戦況の激変にポカーンしてた俺らにミステリの謎解きのような解説をぶると、教官はそのまま退出していった。
高校もそうだったけど、この切り替え感の無さになかなか慣れんわ。
せめて質疑応答の時間程度はとってくれ・・・
横のハマミから溜息が漏れる。
切ない声出すなよ、なぐさめたくなるだろ・・・
「・・・なさけねぇなあハマミ。令嬢パワーでなんとかなんなかったんかよ」
「前世で帝位嗣げばクシャミするだけで太陽の系ごと吹き飛ばせたんだけどね~。こんなチマチマした世界じゃムリよムリ無理」
「曰くの前世かよw子供もいたんだって?・・・そんな小さいケツで言うよなあ」
ハマミの目が切なげに曇る。
子どもは可愛いからな・・・一人なら殊更だろ。
こんな顔をさせる存在への嫉妬に、胃がチクリと痛んだ。
「あら、あんたの生んだげてもいーわよ?今なら皇統のおまけつき」
今ならてなんだよw・・・と笑いかけるも、前世という過去の存在と
「謹んでご遠慮申し上げます」
「我が寵を退くか、なんという無礼」
なんとか絞り出した諧謔に似非ロイヤルトークで答えるハマミの稚い姿がせつない。
・・・あれ?これ完全に少女漫画で主人公に片思いする
「ヤマダ博士さえヘンなモン発見しなきゃハマミは今頃女王サマだったのにね~」
座りなおしたエンリカが割り込んでくる。
「王なんかに封じられるわけないでしょ。皇家や帝室は兎も角、本家じゃあたしが生まれる前からやる気だったし」
ああ、そうだった。
こいつ敵対勢力組織のボス的キャラに生まれ変わってんだった・・・え?あれ??なんでダナンにいんの?????
「マジバナでどこまでやる積りだったのよ」
「んー、小惑星帯を超えて木星の利権まで手が届けば~て目論見はあったみたいだけど・・・外惑星方面軍閥の強欲と国内の政治圧力で一気に全面戦争に突入だったからね~。たぶん開戦のお祭り騒ぎからずっと対処的な行動で右往左往してただけなんじゃない」
あー・・・政治背景とかは俯瞰した太平洋戦争をモチーフにテリングされてんだっけか。懐い。
そいや議会も院が貴衆で別れてたり外交設定に格式をもちこんでたりといろいろメタってんだよな。
「ふーん。地球じゃよーやく終戦か、て感じでお尻搔きながらのんきに調印式見てたら小惑星が降ってくるんだもんな~・・・あんた有名だし降りたらズタズタにされるわよ」
アニメの観客側で俯瞰すっと完全にユニオンの工作だけどなwww
つーか尻掻いてエアコム見てたからハグれたんかよ・・・十年目に知る驚きの真実だな。
・・・あとでアマーリエに密告せねばなるまい。
ソレはともかく、決戦へ臨む戦意の弾みにするしかなかったってことだろうけど、そこまでユニオンに付き合ってやる必要なくね?と、作品世界内の個人に限定されてる今の俺はもどかしさが抑えきれない。
「あぁ、エンリカて地球出よね・・・ウフ、実は手の者にあたくしの処刑会場を用意させておりますのよ?」
処刑??は?なに言ってんだコイツ。
「まさか身代わりのかわいそうな女の子処刑して雲隠れするつもり?」
ああ、なるほど・・・
「そんなもったいないことするワケないでしょ。それに手の者、つったって全員がホンモノよ。アタシらへの恨みを炊きつけて、その後をモニタしてるってワケ。・・・すっごい刑具が揃ってるんだからwww」
フ、だよなあ。
俺との・・・
俺は魂消た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます