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「う~ん……」
俺は頭を悩ませていた。
蜂以来、新しい来訪者は来ていない。
人間はもちろん、動物や昆虫、鳥も来ていない。
魚とか両生類とかが着てもいいように、と水辺は汚泥の沼地と接続する様に作っておいてあるし、藻や水草のような水辺や川辺に生える植物も生やしてはあるのだが、そちらにも、来ることはなかった。
だが、今回俺が頭をひねっているのはそちらが理由ではない。
「もう炉で焼くものが無い……」
そう。
あれから、ちまちまと壷を焼いたり皿や壷を焼いたり……。
あるいは、竹炭を作ったりしていた炉だったのだが。
一通り作りきってしまった今、次に何を作るべきかを考えていたのだ。
皿も食器とかも、もし人がきて住み着いた時用に……と結構な数のセットを作っちゃったんだよな。
壷も作り過ぎて、今や空っぽのものが結構ある状況だし、竹炭もこれ以上は置き場所もない。
それなら別に何も作らない、でいいじゃん。
って、そう思うのが普通だよな。
まあ妥当な選択だと思う。
だがしかし、どうもそこは、貧乏性というかなんというか。
せっかく設備も資源もあるのに、遊ばせておくのが勿体ないというか。
シミュレーションゲームとかでは良くあるよなこういう状況。
まさか現実で体験する羽目になるとは思わなかった。
うーん……でも、流石にもう必要な物なんて何も……あ。
「そうだ、レンガを作ろう」
レンガ作りの家屋なら丈夫だし、かなり長く使えるはずだ。
実際ヨーロッパとかの歴史ある建造物ってレンガとか石壁とかで数世紀経ってるヤツが残っているもんな。
粘土の土壁で固めた家も結構頑丈だし、すぐに崩れる様子はないが、まあしかし、それでもレンガの方が遥かに頑丈だろう。
よし、と意気込んで、俺は早速手を付けることにした。
とはいってもやることは単純だ。
粘土を取ってきて水と混ぜて捏ね、ブロック状にしていくだけである。
ただ気を付けないといけないのは「このブロック一つ一つを同じ大きさにしないといけない」ということ。
そうしないと、積み重ねたときに歪んだりしてしまう。
ブロックをすべて、出来る限り同じ形、同じ高さ、同じ大きさに整えないといけないわけだ。
ただ工場があるわけではない。mm単位ではどうにもならないので、「できるだけ」だ。
細かいレンガ同士の隙間には粘土を詰めて微調整すればいいだろう。
というわけで、その形を決める「枠」を作る。
材料は……今回は竹材ではなく、枝の中でもかなり太いものを選んだ。
作り方は単純明快。
枝材を真っ二つに割ったもので、出来る限り正長方形になるように枠を造る。
歯になる部分を作って、寄席木細工のように噛み合わせて、竹で作った籤で結び付ける。
こうしてできた木枠が、俺の土地でのレンガの基準になるわけだ。
独自規格を世界基準にすることは全経営者の夢だ。そうだろう?
あとは粘土を木枠に通して形を整え、生レンガを量産していく。
そして、半分くらい乾燥させた後にどんどん炉に突っ込んで焼いていこう。
「……なんだか、労働のための労働をしている気がしてきたな」
いくつもの生レンガを乾かすために並べながら、俺はふと呟いた。
幸いなのか不幸なのか、これに答えてくれるような存在はいない。
まあ無駄にはならないだろうし……俺は黙々とレンガを作る作業を続けた。
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