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「よーし」
俺は首を垂れるようにして、実りをつけた稲穂や小麦を眺めていた。
石で作ったナイフで切り取り収穫する。
これを使って、チートじゃあない苗を育てていかないといけない。
「さーて……やるかぁ……」
そして俺は収穫した稲穂たちを手に家に帰ると、よいしょと床に座り込んだ。
……そうそう、家の床には竹材を割ったものを敷き詰めた。
地べたじゃあなくなっただけですごく家感が増す。
とにかく裸足になれるのがいい。
日本人として、家の中で靴を履くのは落ち着かなくてな。
しかし、サンダルを脱いだのはいつぶりになるのか……。
臭くなっていそうだと思って恐る恐る臭いを嗅いでみたが、全く臭いはしなかった。
むしろなんか花のような匂い?さえする。
これは俺の鼻が自己防衛のために壊れてしまったのか、それともエルフの女は体臭からして花のような香りを出しているのか。
いずれ知りたいところだが、まあ今はどうでもよい。
重要なことじゃあない。
俺は自作した陶器の皿を2枚取り出して並べ、稲を手元に寄せる。
そう、これから手作業で一粒一粒、穂から米や小麦を取り出していくのだ。
……いやー、マジで完全に失念していた。
そうなんだよな。
米や小麦は、脱穀とか製粉とかそういう作業が必要になってくるんだった。
今回は苗を作る目的だから、もみ殻を外す必要はないので、まだ一粒一粒手作業で摘まんでいけるが。
もしこの米一粒一粒を「脱穀しろ、手作業で」と言われたらエルフ基準でも時間がかかる。
さらにそれで得られるのは玄米だ……そこは妥協しよう。
銀シャリ食いたいから精米しろ?ハハッ。
千歯扱きを作らないといけないな……。
前世で授業でイラスト付きで見たことあるし、構造も簡単だったはずだ。
何個か試作品を作れば多分できるだろう。
いやまあ、この米や小麦の苗が育って実ってからの話だけれど。
米も、日本では一般的な田んぼで作る水稲じゃあなくて、陸稲だし。
最初の内はそこまで収穫量は期待出来ないが、まあそこは仕方がない。
「ふぅ……」
長い時間をかけていたらしく、日もそれなりに傾いていた。
一息ついて土地を見渡す。
思えば、この異世界に来て結構時間が経ったように思える。
色々と寄り道をしているが、土地は順調に増えているし、採れる作物も色々と増えてきた。
そして何より目を引くのが、最初に植えた木の苗。
20mを超えたくらいでもう圧巻だったのだが、すでにどれだけ大きいのか、分からないくらいになっている。
50mは超えてるんじゃないか?
流石に100mには、届かないだろうが……。
幹の太さとか、もう理解不能の領域だ。
俺何人分だよ。
俺は家の隙間から、つかの間、大きくなった木を見上げていた。
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