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「ふんふんふ~ん……♪」
俺は鼻歌を唄いながら、炉の周囲を竹を切りだして作った竹材の柱で覆っていた。
炉の欠点として、雨が降ってきたら使えないことがあるのだが、ここを小屋で覆ってしまえば問題なかろうという考えである。
なにせ炉は最近フル稼働で忙しいからな、ちょっとでも休止期間を設けないといけないのは惜しい。
それに小屋と言っても、家と違って壁のない、単に屋根をつけるだけのもの。
運動会だとかイベントだとかでよく見るテントみたいなアレだな。
壁を作らなくていい分、手間もそこまではかからない。
そうやって組み立て、小屋を建てている間も、炉は作業している。
今炉で作っているのは、炭だ。
厳密には竹炭、ありあまる竹材を使った燃料を作っているわけだな。
炭を作るのは簡単だ。
酸素のない状態で高温にすれば、炭化して炭にすることができる。
酸素があると普通に燃えて灰になるだけだからな(1敗)。
まあ、灰は灰で利用できるからいいんだが。
……負け惜しみじゃないぞ。
本当だぞ。
炉の中に竹材を敷き詰めた後は、炉に火をつける。
空気を熱くしたら、炎を消して、煙突部分と空気口を土や蓋で塞ぐ。
こうして、蒸し焼きみたいにしてやれば炭が出来る。
炭は木材よりも燃焼効率がいいからな。
これでもっと陶器が焼けるようになるぜ。
そう、陶器もあれから色々と試してようやく形になった。
皿とかも大きなものを焼けるようになったし、ちょっと太いが箸も作れた。
そして何より壷だ。
これで水が必要な時に何度も水辺に行く必要がなくなったし、運べる量も増えた。
あとは採れた野菜も壷にいれておけば、地べたに置いたり籠に突っ込んだままにするよりは良い。
「そうすると後は~……」
竹材の柱を立て終え、それらを竹材と蔦ロープで結びつけて屋根になる部分を造りながら、俺は思案していた。
保存できる壷が作れたのなら、いよいよ手を出すべきかもしれない。
そう、米や小麦だ。
カロリーの摂取源として、炭水化物が豊富に含まれる穀物はとても優れている。
俺が食うこと以上に、今後、来るかもしれない人たちに食わせてやらないといけない。
その時に傷んだ野菜しかない、とかになったら申し訳が無い。
俺はふっと、男が眠る場所に目を向けた。
そこにはすっかり育った桜の木が、小さな花をつけて風に揺れていた。
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