00000315

結論から言おう。

何とかなった。


途中から俺はもうどうにもならないことを把握していた。


そりゃあそうだ、俺が持っているのは石斧と石ナイフもどき。

チェーンソーどころか鉄斧ですらない。


そんなもので1本頑張って竹を切り倒している間に、数本の竹が生えてくるような状況になったのだ。

俺が「もうマヂムリ」と五体投地するのは時間の問題だった。



そこで俺が取った行動とは。



トチ狂って「ほんともう勘弁してください」と竹に向かって三跪九叩頭の礼をすることだった。


……いや、本当にマジでいっぱいいっぱいだったのだ。

もし「竹に愛を囁けば収まるよ」とか啓示神の悪戯を授かっていたなら、俺は躊躇わずに竹に求婚していた。


だが、本当にそれで、成長速度が収まったのだ。


ここで「失敗した俺は失敗」って連呼することにならなくてよかった。


いや~~~~~……本当に良かった!

土地が竹に占拠されて上陸不能とかになったら笑い話にもならん。


真面目に考察するなら、チート成長速度を制御できる、ということだろう。


元々、俺が作った苗にのみ与えられた特典のようなものだ。

あった方が便利ではあるが、もしそれが不都合な場合は与えないことも選択できる。


これは苗を作る初期段階ではなく、あとから没収することも可能らしい。

ぽっともらえた能力チートなんて、ぽっと失うことだってあり得るだろう?


そのおかげで、とりあえず竹の成長は常識的な速度に収まってくれた。

これなら必死こいて伐採すれば何とか抑制できるだろう。


実際、木材としてはすごく便利なのだ。

前に言った通り、建築材にもなるし、道具にもなるし、燃料にもなる。

タケノコは食料になるし。


だから切り倒した竹材は、もう片っ端から加工する予定だ。

とりあえず今は、乾燥のために家に併設して建てた仮設の材木置き場に平積みだが。


「さーてあとは……お、こっちも育ってるな」


竹に構っていて放置していたが、それ以外の苗もしっかり育っているようだ。


薬草を思い浮かべて作った苗や、森に生える雑草をイメージして作った苗は、木々のあちこちで少しずつ茂みを作っていた。


苗をつくるときの法則にも、追加のルールを発見できた。


苗を作るときはその時の俺のイメージに合わせ、それに近い植物が選ばれるようなのだが。

例えば「前に苗にしたものとは違う薬草」とか「怪我に効能のある薬草」とかそういう指定でも苗が作れるのだ。


正直、そんなに草の名前とか効能なんて知らないので、これは助かった。

薬草が育ってきたら、採って乾燥させて、ゴリゴリと砕いて粉末しないといけない。


やることはいっぱいあるな、と俺は息を吐き、背を伸ばした。


時間はいくらでもある。

だが、できるだけ急がないといけない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る