00000116
この世界にやってきて、それなりに日数が経ったように思える。
最初の頃に植えた木は成木になり、今はもう巨木と言えるほどに大きく立派になっていた。
林檎の木も育ち、テレビで見た果樹園に生えているそれと変わらないようにも思え、青い実をつけていた。
そしてあの後に急いで植えた野菜類の苗……水分補給のための胡瓜や、食料のための
これで食料面は一旦は大丈夫だ。
二度と泥水を口にしなくていいことに、俺は堪らず安堵した。
ただ、どうもチート成長速度は俺が手で作った苗限定のようで、収穫した蕃茄の種を地面に植えてみても、爆速で成長するということはなかった。
一度植えてしまえば、あとは黙っていてもあっという間に緑が広がる、というわけではなさそうだ。
俺が種を回収して、撒いてやる必要があるってことだな。
ともあれ今後の方針として……土地を広げるための樹木だけではなく、食料確保のために時折、野菜類を中心に可食できる植物の苗を植えていこう。
そして種が出来たらそれを撒いていく。
普通の成長速度でも大きな畑ができれば、そこで食料生産できるからな。
そのことを再確認し……俺は次の問題へと着手する。
「家がないんだよなぁ」
そう、今まではいっぱいいっぱいであったし、野生動物とかがいて襲われることもなかったから気にしていなかったが、俺は今、絶賛野宿を続けているのだ。
例えばもし、台風がやってきたら俺は下手すれば空を飛ぶ羽目になるだろうし、雨が降ってきたりすれば、ずぶ濡れになってしまう。
病毒耐性の能力で風邪は引かないのかもしれないが……それでも、嫌なものは嫌だ。
「そうだなぁ……食料確保も目途がついたし、最低限必要な文化的な暮らしを目指したいな」
火急の問題が解決したので、ある程度余裕ができた……ひいては、暇になった、というのもある。
住まいは野宿。
火もなく調理道具もないので、野菜は病毒耐性にモノを言わせ生のまま丸かじりだ。
「幸い、材料はできたし」
俺は巨木を見上げ、そしてその根元へと視線を移す。
地面には、いくつもの枝や葉っぱが転がっていた。
成長の過程で枯れたりした部分が自然落下してきたのだ。
これを使えば簡単な道具くらいなら作れるだろう。
今までできなかったが、ある程度量が集まれば火をおこし、それの燃料にもできるはずだ。
「あとは……ロープとかの代わりに、蔓とかの苗を育てればいいか」
俺はうんうん、と一人頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます