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転生してから数日経った。
その間に分かったことが、いくつかある。
まずこの沼地だけど、マジで生き物いないっぽい。
夜になると本当に真っ暗になって、最初は怖くて一睡もできなかったんだが……。
逆に言えば、明かりを灯すような人間とか魔族とかそういうの、いないんだ。
それどころか、動物の鳴き声は一切しないし、鳥とか虫の音とかもない。
おかげで昨日は眠ることができた。
我ながら神経図太いな。
勿論、こんだけ広がっている沼地の先には、マシな大地があって、そこに生息しているかもしれないが。
あ、魚がいるのかとかは確認してない。こんな汚い沼には入りたくないんだ。
次、この身体、腹減らない。
今の今まで食事とることを忘れていた。
そして意識しても空腹感は勿論、のどの渇きもない。
そのせいかもしれないが、大も小も出ない。
俺の知ってるファンタジーのエルフは、肉は食べない菜食主義だったり、焼き菓子を食べたりとかそういう感じで、食事自体は不要ってわけじゃあなかったんだが。
まあこの世界のエルフはそういう種族なのかもしれない。
あと、やたらと眠る。
日中常に眠いというわけじゃあないんだが、どうも日が落ちて(空はずっと鈍色で太陽なんて分からないんだが)暗くなると急速に眠くなる。
無理して行動しようとしても、眠すぎて気が付いたら寝落ちしているレベルだ。
そのくせ、空が明るくなってくると、さっと目覚める。
体感で1日の半分は寝ている感じだな。
光合成でもしてるんだろうか?
そして、俺は今回実験をしてみることにした。
俺は手を合わせて目を閉じる。
能力で苗木を作ろうとしているのだが……今まで、俺は何か樹木のことを考えていたわけではない。
適当に
そうして今まではすべて、同じ種類の苗木が生まれてきた。
……いや、実際には見た目が近い近隣種で細かくは違うかもしれないがな。
俺は樹木の学者じゃあないんだ。
だが例えば、このときに……木の種類を指定出来たりするんだろうか?
今回は、リンゴの木をイメージしてみる。
目を開くと、そこにあったのは苗木は今までのそれとはまったく違う見た目のものだった。
「おお」と思わず口から感嘆が漏れる。
これが本当にリンゴの木なのかどうなのかは植えてみて、それぞれの苗木が育って差異を見ないと分からないが……。
おそらくは、俺が指定した苗木を作ることができるんだろう。
果樹園まみれにすることも可能かもしれない。
「うん?」
だが土地に樹木を植えたときに異変に気が付く。
リンゴの苗(仮)を植えたのに、土地が拡がらないのだ。
「うーん?つまり指定して苗を作ったときは、それを植えても土地の拡大はできないのか?」
理由は分からないが、そういうことのようだ。
とりあえず土地を拡大させたい俺としては、これは残念だ。
果樹園を作るのはもっと先の話になるだろう。
「しかし、リンゴの木か~……なんの品種だろうな」
リンゴと一口に言っても種類は様々だ。
日本の食卓に上がってくるようなリンゴは、人の手により品種改良されたものであり、自然界に存在するものじゃあない。
そもそも俺も前世で農家じゃあない、リンゴの種類なんて有名どころを2つ、3つ言えるかどうかくらいで、その特徴だとか差異とか言われても全く分からない。
この植えたリンゴは果たしてどんな実をつけるのか、今から楽しみだ。
「まあ多分……数年、ってことは、ないんだろうな」
俺はそう言って、先日、リンゴよりも先に植えた苗たちに目を向ける。
そこには、すでに俺の背丈に迫るほどに成長した若木の姿があった。
いくら農業とか林業とかを修めていない俺でも、この成長速度が異常すぎることは理解できた。
竹とかは、朝タケノコだったものが夜には若竹になるのだが、あれは成長しているのではなく水を吸って膨張しているだけらしいし、俺が植えた苗はどう見ても竹じゃなく樹木だ。
そうなると俺の能力の影響……神様から授かったこの能力で作られた苗木は、成長速度も特別早くなるのだろうか。
となれば、このリンゴの木も1週間以内は無理でも、数か月後には実りを収穫できるほどに成長しているかもしれない。
俺は、今日はもう何もできなくなったのをいいことに、ぼんやりと木々を眺めてそんな妄想にふけっていた。
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