第18話 おれの、小説家を目指す道は、これからだっっ!!!
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは、ほぼほぼ関係ありませんので、まあ、あんまり深くは気にしないで下さい。
特に、どことなく聞いたことがあるような作品名が出てきたとしても、スルーして下さいね。
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悩んで気持ちが後ろ向きだと、よくないことも続くらしい。
まず、『ボインの伝説』と『リアダン』がダブルで一次を通過していたコミカライズのための賞で、どちらも二次は通過できずに、消え去った。『ボインの伝説』はこの賞の応募作の中では『小説家になったろう』での最高ポイントだったにもかかわらず、だ。ポイントは関係ない、という言葉が真実だと思える。
続いて、『ランクル夫人』が生き残っていた小説賞でも二次通過が発表された。こちらも、二次に『ランクル夫人』は残れず、消え去った。
少しだけ勇気づけられたのは、『リアダン』が月間ランキングでひとつ順位を上げて3位になったことだった。
しかし、よくランキングを確認してみると、1位と2位は「即寝チート」という、相手を一瞬で眠らせてしまうチート能力の持ち主が活躍する異世界チート無双ものの、書籍化作家の作品だった。
しかも、アニメ化が決まったらしく、本編は完結、そのスピンオフと一緒にワンツーフィニッシュを決めていたのだ。
「結局……実力のある書籍化作家には、勝てない、のか……」
それが、素人作家の限界なのだろう。『ボインの伝説』で戦い続けて、力及ばず敗北した日々が頭をよぎる。
「……気分転換に、旅行にでも、行ってくるか」
おれは『リアダン』の続きである、『リアルダンジョンとタイムアタック ~RDTA、マネジメントSIM~』のその1とその2を予約投稿で7月分まで予約すると、青春18きっぷで格安旅ができるように乗換案内を検索し、じゃらんでホテルの予約も入れたのだった。
今回の気分転換の旅行は青春18きっぷを利用する。JRの全線と、一部3セク路線が利用できる国内では最強の乗車券だ。
実は、7月の旅行では、JR東日本とJR北海道だけの乗り放題の切符だったため、旅の途中で残念ながら諦めたポイントが存在したのだ。
それは、身延線。
中央線で東京から長野の松本を目指す予定ではあったが、国宝の松本城よりもずっと行きたかったところ。
それが、身延だ。
ただ、身延線はJR東海の路線なので、JR東日本とJR北海道しか使えない前回の旅行の切符では利用できなかった。
松本の次の日には熱海だったので、本当は身延線を利用して富士山を眺めながら行きたかったのだ。
身延には、何があるというのか。
そんなものは、決まっている。聖地だ。いや、もちろん、とある仏教の聖地でもあるが、今おれが言ったのはアニメ的な聖地の方だ。
前回、7月の旅行も、最終日は水戸に宿泊予定で、別に切符代を払い、鹿島臨海鉄道を利用して大洗へと足を踏み入れている。ここも、聖地なのだ。
また、熱海に泊まった日も、熱海ではなく、別に切符代を払い、下田まで足を踏み入れた。ここも、聖地だった。
聖地巡礼は旅の基本だ(あくまでも個人の感想です)。
そうして、たどり着いた、3月末の身延。駅の近くのそこかしこに、聖地らしいポスターやら等身大のキャラやら……最高なのだが、4月も近いというのに、思っていたよりも寒い。
駅舎に戻り、座って一息つく。
タブレットを取り出して、ネットを開く。旅先でもWiFiでネット接続だ。ネット社会は病んでいるとおれは思うが、その闇にどっぷり浸かっている自分を否定できない。
ジャンル別月間2位だった短編『王子も楽じゃない ~婚約者の義妹が「お姉さまにいじめられて……」と言うのだが~』が1位になれたのかどうか、気になっていたので、いつものように『小説家になったろう』のホーム画面を何気なく開いた。
左上に、『メッセージがありますよー』という通知があった。
「……ん? なんだ? 運営? 感想の返信じゃなくて?」
いつもなら、書き込んだ感想への返信がその作者から返ってきて、それがメッセージとして残されるのだが、この日は、返信ではなく、運営からのメッセージだった。
「まさか、垢BANの警告とかだと、笑えんのだが……」
おれは、恐る恐る、そこをタップしたのだった。
そこには、『君に伝えたいのは、コンテストについての連絡だよ!』という題で、『小説家になったろう』の運営が、コンテストの主催者からの取次の依頼を受け、主催者から預かった文面と、主催者へ直接連絡してほしい、という一文が書かれた、メッセージがあった。
また、転送先アドレスとして、『書籍化に関するガイドラインはしっかり確認してね!』のページに飛ぶようなリンクもあったのだ。
そして――。
『受賞作:タイトル:ボインの伝説
賞:佳作
副賞:賞金5万円・書籍化検討及びコミカライズ検討』
――という内容が、確かに、そこには、書かれていた。
「……は?」
まるで一人芝居でもしているかのように、おれの口からは間抜けな音が漏れ出たのだ。身延駅がローカルな駅で良かった。おれ以外の乗客はいない。
「え? 『ボイ伝』が? なんで?」
何度も、何度も、落選し、悩み、苦しみ、諦め、達観してきた、今。
まるで、この通知がいわゆる嘘告のように、信じられなかったとして、それを誰が咎められるのだろうか。いや、ない。反語。
「え、あ、いや。自分でも『ボイ伝』、好きなんだけどな。好きなんだけども。なんだけども!?」
何度も、何度も、運営からのメッセージを読み直す。
混乱している頭の中を整理するように。
そういえば、『ボインの伝説』が最終選考に残った小説賞がひとつ、あったような記憶があった。
そして、一文に、気付く。
『書籍化・コミカライズについては検討するみたいなんだけど、それって確定じゃないから! そこ、気をつけてね! あくまでも検討だからね!』
「……っておい!? 運営!? ガイドラインとかにジャンプさせるメッセージだから書籍化されると思ったじゃねーかっっ! ぬか喜びさせてんじゃねーよっっっ!!」
とりあえず、この日。
身延は、おれにとっても、個人的な聖地となったのだ。そう、とりあえず、思わず叫んでしまうくらいの……。
……かつてないモチベーションが心の奥底から湧いてくる。
そう。
おれの、小説家を目指す道は、これからだっっ!!!!!!
完
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※あとがき失礼いたします。
拙作『評価ポイントの後押しで下剋上を目指し燃え尽きた素人作家のおれは、再び評価ポイントの後押しで立ち上がり最強となる!』を最後の最後まで読んで頂き、誠にありがとうございます。
この物語について、より深く知りたいという場合には、
創作エッセイである『私的な創作への騙り ~相生の毒白~』
https://kakuyomu.jp/works/16817330659541776427
を読んで頂けるとよく分かるかと思います。
書籍化やコミカライズを夢見て、ネット小説を書いてはおりますものの、残念ながらそれを実現することができずおります。そういった方は、なろうにもカクヨムにも、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
これを読んで、共感して頂けたら嬉しいです。
また、もし、よろしかったら、他の拙作も読んで頂けたら嬉しいです。
約10万字、文庫本1冊程度の作品として、
『賢王の絵師 ~アイステリア王国中興物語~』をオススメさせて下さい。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054894098923
王に仕える絵師から見た、賢王の戦記となります。文体が堅く、読みにくいと評判?です。
旅のエッセイも書かせて頂いております。
『旅路の徒然 ~おい、相生。その程度で旅人を気取るたぁ、てめぇはまだまだ、蒼い!~』
https://kakuyomu.jp/works/16817330659787365640
相生が日本各地を訪れた時に、感じたこと、思ったことなどを書き綴っております。
旅行の参考になるかもしれませんので、目を通してみて下さい。
どうか、相生作品をよろしくお願いします。
相生
評価ポイントの後押しで下剋上を目指し燃え尽きた素人作家のおれは、再び評価ポイントの後押しで立ち上がり最強となる! 相生蒼尉 @1411430
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