六 三畳間
思案が
自分でなくとも、きっと他に誰かが見付けるだろう。そうだ、自分でなくともよいのだ。
そう思ってもみたが、すぐにその考えは否定せざるを得ないことに思い至った。
ここ数ヶ月、随分長い時間をあの場所で過ごしているが、これまで誰かを見掛けたことはない。
蝉や、蝶や、
あそこは、
荒れ果て、
あの
そんなことを、つらつら考えているうちに、はっとなった。
――ふと、あの女の顔が頭に浮かんだからである。
ひょっとして、あの女なら――
むしろ、あの女――
そうだとすれば…… あのとき――
まさか、そんな筈もあるまい……
だが、打ち消しても、打ち消しても、ある観念が自分の頭の中心に持上がってくる。繰返し、繰返し――
どうにも、不都合な方向に、ものごとが符合してしまう。
何だか、心持ちが悪い――
急に寒気がして、体の芯からがたがたと震えが
それと共に、
慌てて
さて、どうしたものか……
それぞれが連関し増幅し合いながら、堂々巡りを繰広げている。
ほとほと疲れ果てた。湯にも行かず、飲まず食わずで、ようやくのことに布団を引張り出し、そこに倒れ込んだ。
その夜中のことである。
あのように激しい雷雨が襲ったのは――
<続>
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