二 狛犬
翌朝は、嘘のように
さて、
だからと言って、自分はあれをじかに
ただ、行かねばならぬという、義務感が肚の底からわくわくと
とりあえず、飯も食わず、顔も洗わぬままに
まず、自分を出迎えるのは、左右に配された狛犬。これはいつものこと。
実に可愛らしい笑みを浮かべているが、何でも随分古いものらしい。右の方の狛犬のみ尻尾の一部が欠けて喪われているが、それ以外に壊れた所はなく、彫の風化も少ない。台座の上面、狛犬の足許は、鮮やかな緑色の繊細な苔が、そこだけ
狛犬の造形の巧拙はと問えば、むしろ拙の方に傾いているように思われるが、それが却って好い味わいでもある。上下から潰したような横広の顏が、歯をむき出しにしてにやにや笑っている。それが何とも可愛らしい。
ただ今日は、その二頭の狛犬が何だか妙な具合に黒々としていて、表情も曖昧に映る。
近付いて見ると、何百、何千とも知れぬ団子虫やら、
二頭の体にも顔にも頭にも、
自分の体や、あろうことか、顔や口の中までをも、小さな蟲どもに
ほんの少し想像するだにゆゆしいものだが、この二頭は、一向意に介する様子もなく、まったく平気なそぶりで愉快そうに、にやついている。
おそらくは、夜来の激しい雨が小さな
しかし、
何だかどうも、厭なものを見てしまった。
<続>
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