第三十一話:楽しい鬼ごっこの時間じゃ♪

天峰

「十祇様を助けてくれないか...」


日神

「無理だ。一人で軍隊を作れる能力は元から警戒される。

 それを彼は知った上で犠牲者が出て抵抗をしている」


天峰

「嵌められたンだよ...!! 協会に現れたアギ魔隊員は、

 自分から十祇様に触れに行ったんだ!

 そしてその隊員が死ぬのを知ってたかのように...!

 参番隊が協会を囲ってやがったんだァ...!」


日神

「...直接聞く事には何にもならん。

 一度十祇を拘束し、霊仙さんと十祇に聞く。

 だが勘違いするな。死が少し離れただけだ」


そう言い放ち、霊仙の向かった方向へ走り出す日神。


十祇

「近づかないでください...!」


霊仙

「そりゃ無理じゃろ。ウチの隊員一人殺されてんのよ?」


十祇

「その罪はボクの人生をかけて償います!

 だから一度だけ話し合う時間が欲しいんです!

 腕くらい切り落としてくれたって構わない!」


霊仙

「でも、ダメじゃろ」


ただニコニコとしながら後ろで手を組み、十祇に向かって歩く霊仙。


十祇

「投降はします! だから話す時間をください!」


霊仙

「ダメじゃ」


そう言って手刀を構え、決殺の構えをとる霊仙。


霊仙

「最後まで偽善者じゃのお」


スパッ

霊仙は十祇に向けて手刀を放った。


霊仙

「およ?」


十祇

「アレ...生きてる?」


十祇が生きるのを諦めた瞬間、十祇の能力が覚醒した。

威嚇で投げようと持っていた石ころが盾と成ったのだ。


霊仙

「たまにいるよねん、散り際に覚醒する子」


阿良日十祇の覚醒した付与の力の権能は、

無機物の固体に触れると能力が付与される力である。

石ころに盾の能力が付与され、十祇を守ったのだ。

ちなみに与えた能力は十祇が知覚する事が可能である。


霊仙

「全く困ったのぉ〜」


十祇は石を3つ手に取り能力を確認する間もなく投げた。


霊仙

「そうはいかんでしょ」


その内2つをデコピンで飛ばしつつ蹴ろうとした時には、

十祇が眼の前から消えていた。


霊仙

「運にも恵まれてるのね」


十祇の投げた石の内一つが、

投げた石の下にワープできるという能力であった。


十祇

「神様への感謝が今までボクを生かしてくれたんです!」


そう言って霊仙の居ない方向にまた石を投げる十祇。


霊仙

「もうさせんよ」


投げた石の先に霊仙は、いた。


霊仙

「老体に無理をさせないでくれよぉ?」


そう言って十祇の首を片手で締め上げる霊仙。


十祇

「グ...ググ...」


霊仙の手に十祇の手が触れようとしたその瞬間ー


ズドォン...!!


十祇の腹に重い掌底が入り、数十m吹き飛んだ。


霊仙

「ワシ、興味湧いちゃった♪ 

 神はいつまで君を見放さないのか試させてちょ!」


十祇

「あ"ぁ...あ"...お"ぃ...」


吹き飛んだ十祇の下まで歩く霊仙。


霊仙

「もっと楽しませてくれるんじゃろ?」


十祇

「来"い!!!」


先程叩いた石2つが加速しながら霊仙の下に降りかかる。


霊仙

「危ないのぉ〜」


十祇

「巻き付け!」


ガードレールがうねり出し、

石を躱した先の霊仙に巻き付いた。


霊仙

「ほいな」


全身の関節を外して悠々と抜け出し、

逃げ出した十祇を追いかける霊仙。


十祇

「溺れろ!」


十祇が触れたアスファルトが液体となり、

霊仙の左足が沈んだ瞬間に固体に戻る。


霊仙

「バカじゃの、拘束は無駄と分からないのかい」


次はコンクリートを崩しながら左足を出し、

また十祇を追いかけようとしたその時ー


日神

「止まれ」


十祇

「...」


十祇の首に如意棒を押し当てる日神。


霊仙

「おぉ日神君。何してんの、早く殺しなさいな」


日神

「あなたもです霊仙さん。一度手を止めてください」


霊仙

「...何のつもりなのかな」


手をパキパキと鳴らしながら、仕方なく足を止める霊仙。


日神

「貴方にも一つ疑いがあります。

 一度十祇を拘束し、事情を聞くべきです。

 ボロが出たら殺せば良い。結論を急がずとも、

 十祇に投降する気があるのなら、

 話を聞くくらい良いのでは無いのですか。

 ...私は貴方を疑いたくはありません」


霊仙

「...ワシは逆。一度戦いたかったんじゃ♪

 アギ魔隊のトップ層とな。非アギが何処まで戦えるのか、

 最後に確かめておきたくての。まっ、

 日神君は今非アギみたいなもんじゃけどね」


日神

「冗談はよしてください...!」


霊仙

「もう老い先短い人生じゃ。

 好きなだけ遊んでも良いじゃろ?」


日神

「こちら日神。至急隊長格の要請をねが」


腕時計から本部へ連絡を入れようとした日神だがー


ガシャン!


霊仙

「させんじゃろ。 この時間を楽しめクソガキ」


日神の腕時計を粉砕し、掌底を日神に当てようとするも、

日神はギリギリで躱す。


霊仙

「そうじゃ、こんなのはどうじゃ?

 日神君は本部が来るまでに十祇を守りきったら勝ち、

 ワシは本部が来るまでに十祇を殺せたらワシの勝ち」


日神

「御巫!! 十祇を拘束して離れ」


霊仙

「スタート!」


日神

「...ッ!」


霊仙は日神に蹴りを入れる。プロでも見えないその蹴りは、

日神を危うく失神させるまでに追い込む。


(一体何が起きてるのよ! 

取り敢えず四の五の言わずに拘束しなきゃ!)


右京との戦闘後、十分程して傷はある程度治っていた。

そして音のなる方へ歩くと、日神が叫んだのであった。


霊仙

「ホホッ! 能力と片目片腕がなくても動けるのねん!」


日神

「正気ですか! 仲間内の戦闘は禁止でしょう!」


霊仙

「だからコレを持って辞めるって言ってんのよ」


日神

「それで通る訳ないでしょう!」


「今!」


日神の足元にある拘束具を、

超加速して取ろうとする御巫だったがー


ズドン...!


「あ"ぁ"あ"ぁ"あ"あ"!!!」


日神

「御巫!」


御巫が伸ばした手を霊仙が一瞬で踏みつけ、

御巫の右手首が反対方向に折れた。


「行"け"ぇ"!」


拘束具を蹴り飛ばして十祇の方向へ蹴る。


霊仙

「余所見かい?」


バシィィイン!!!

霊仙のエレボが日神が掌で防ぐも、

掌へ走る衝撃は、一撃で頑丈な日神の手に青痣を作る。


「触られて死んだら嫌だし、自分で拘束して!」


十祇

「わかった」


十祇はかつての御巫の様に、自らを拘束具で腕ごと拘束された。


「首根っこ掴む形で申し訳無いけど急ぐわよ!」


十祇

「...わかりました!」


御巫がエンジンを稼働させようとしたその時、とある事に気づく。


「やっぱ自分で走って! 背中は守る!」


十祇

「えぇ!? 分かりました!」


(マズい、エンジンを酷使しすぎた! 

慣れない能力を扱ったせいでガタが来た!

さっき加速する事ができたのが奇跡なほどに、

足の内部が壊れてる! 今は爆発を起こせない!)


御巫は十祇を押して走り出すー



〜視点は日神へと移る。〜


日神

(端からこの人に勝てるとは思ってはいなかったが...

余りにも実力差が開いている...! 今の俺に出来るのは、

最低限の足止めだけだ。今はそれを全力で遂行する!)


如意棒を振り回して牽制して時間を稼ぐ日神。


霊仙

「そりゃダメでしょ。舐めすぎよ?」


日神の如意棒を流して奪い取り、投げる霊仙。


霊仙

「最後にいっちょ大技見せたげる。

 "灯籠流し"」


流麗で洗練された動きから日神は悟る。


日神

(これは...まぁ...死にはしない、か)


ズドドドドドドドォォオオォオオ!!!!!


一番ダメージが入る場所に一番ダメージが入る殴り方で、

誰にも捉えられない動きで的確に殴り続ける霊仙。


日神

「手"心加えたなぁ!?」


霊仙

「マズっ」


ドズン!

意識が遠のいて行く中で、霊仙に蹴りを入れる日神。

霊仙はしっかり防御したが、日神の筋力はそれを上回る。


霊仙

「あらま、ダメージを分散させても骨にヒビが入っちまった。

 タイムリミットはあと1分もないかの〜?」


日神はその場に倒れ、霊仙が十祇に向けて歩き出す。

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アギ至上主義のこの国で、私は殺されていく どーてーの独り言 @do-te-0208

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