第三十話:覚醒の時間

「閃光...爆海!!」


蒼白く光る御巫の腕を見て、とある確信を得る右京。


右京

(この状況...能力の覚醒か新能力が発現したと見ていいだろう。

先程までの戦い方ではもう通用しない。ならどうする?

答えは簡単だ... 一か八か、俺も刀を覚醒させる!

出来ない話では無い。彼女の覚醒は死の淵に触れた事で起きた。

そして彼女は能力が発現したのはつい最近。

それは俺にも言えること。条件は揃っている...!)

怨呪之大竃エンジュノオオガマ!!」


怨呪之大竈は自分と対象を魔界へと引きずり込み、

魔界の灼熱と妖怪の攻撃を一斉に浴びせる大技である。

が、御巫は灼熱を吸収し、音が立たない内に妖怪を一掃する。


右京

「何だと!?」


状況整理もつかないまま、右京は御巫に間合いを縮められる。


「どらあぁぁああ!!!」


ドジュアァァアアァアア!!!!!


燃え盛る魔界は、右京ごと御巫の蒼い爆炎で塗り替えられる。


...デルタの第四の能力、操作の力は、

エネルギーを操作する事ができる能力である。

体内に溜まったエネルギーを爆発以外の形で応用できる他、

爆発のエネルギーの方向を捻じ曲げたり、

環境のエネルギーを自分のエネルギーに変換、

爆発に応用したりその逆を行うことが出来るのだ。


「今ならどんな敵にも勝てるかもぉ...!」


興奮状態の御巫は理性を失っていた。


右京

「まだ...戦えるだろ? 俺も今、刀の真髄に触れたとこだ」


右京の妖刀、百鬼之宴の真髄とは、

魔界の妖怪の魂を消費する事で、

多大な恩恵を得ること出来る事にある。但し、

一度魂を消費した妖怪の力は、二度と行使する事が出来ない。

右京は水精の翁の魂を消費し、御巫の攻撃を凌いだ。


「でもお互い、これで最後でしょう!?」


ー両者は必殺の構えを取るー


右京

大太郎法師之憤撃デイダラボッチノフンゲキ!」


爆神形態バーストヴァルキリー


右京の刀からは上半身だけで50mを超える人型妖怪が出現し、

御巫の姿は手と目と足が蒼く光り出して髪は逆立つ。


ドガガガガガガガガガガァァアァアア!!!!!!


巨大な妖怪はその大きすぎる図体とは裏腹に、

ボクサーよりも速い速度で御巫目掛けて殴り続ける。

が、御巫の動体視力はエネルギーを纏うことで強化され、

強化された身体能力はその攻撃を難なく躱す。

御巫は右京との距離を瞬く間に詰め、トドメを刺そうとするも...


右京

(見切った!)

火舞太刀カマイタチ!!」


右京は百々目鬼とどめきの魂を消費して未来を予知し、

御巫の軌道の先で刀を構え、

鎌鼬かまいたちの魂を消費して最後の斬撃を放つ。


「...ッ!」


ジュゥウゥウウウウゥウ!!!!!


御巫は咄嗟に反応して右京の刃を光る左手で抑え、

右手を右京の顔面に突き出した。


右京

(...!? なぜ切れない!?)


ドガッ!!

御巫の拳が右京に炸裂し、右京は倒れた。


...本来なら右京は腕ごと御巫を切って勝利していただろう。

しかし、長時間に及ぶ戦闘の末、右京の刀は錆びたのだ。

それを見逃さなかった御巫は右京の刀を左手で止め、

右京に渾身の右腕を食らわせたのだ。


「ハァ...ハ"ァ...痛ったいなぁ...!!!」


錆びたとて御巫の左手は刀が大きく食い込んでいた。


「早く追わないと...!」


バタッ


御巫が走り出そうとしたその時、

アドレナリンで抑えていたダメージが御巫を襲い、

御巫はその場に倒れ込んだ。



〜視点は日神と霊仙に移る〜



霊仙

「ホッホッホ♪ 追いついたね」


日神

「大人しく投降しろ」


十祇

「頼んだよ君達。皆で逃げるんだ」


天峰&富澤&清白

「はい!」


日神

「霊仙さん、阿良日を追ってください、

 残りは俺が片付けます」


霊仙

「はいよ」


清白

腐鎖スポイルチェイン!!!」


ガイィイィイイン...!!!!


触れた生物を溶かす鎖を日神達に向けて放つも、

日神は如意棒で鎖を巻取り、それを利用して間合いを詰める。


清白

「!?」


日神

「あまりプロを舐めるなよ...!」


富澤夕香とみさわゆうか

「それ、コッチの台詞」


夕香がそう言うと、日神の顔が赤く染まる。


日神

「なるほどな...アルコールか」


富澤夕香の能力、"酔いの力"は触れた相手を酔わせる。

触れれば触れる程相手を酔わせ、

触れすぎると急性アルコール中毒で最悪の場合死に至る。

触れた相手の筋肉量が多ければ多いほど、

体内にアルコールが回りやすくなる。口からではなく、

血液に直接アルコールをブチ込むので、

筋肉量が少なくとも、三秒で酔い始める。


夕香

「アナタ...相当身体鍛えてるクチでしょ?

 そういう人程、一瞬で堕ちるのよね...見たところ...

 常人の15倍の筋肉量はあるかしら」


日神

「誰が...この程度で堕ちるか...」


夕香

「何ですって...!?」


そう言い放った日神は、身体から蒸気を出しながら立ち上がる。


夕香

(冗談じゃないわ...! 片腕が欠損してるから、

血の巡りは常人よりも早い上に1秒間ガッツリ腕を掴んだのよ!?

あの筋肉でどうして立っていられるの!?)


日神

「能力は...完全には消えてくれないらしい。

 俺の炎はアルコールを蒸発させたんだ...まぁ、

 今の俺に出来るのはその程度だがな」


ドガガガ...!


一瞬で清白と富澤の顎を如意棒で突き上げ、意識を奪う。


天峰

「オマエたち!」


日神

「残りは幹部が一人と下っ端教団員が幾人か...」


天峰

「テメェ許さねぇぞ...! 斑突マダラづき!」


三本の尻尾の先のドリルで、縦横無尽に突き刺す。


日神

「初動を見誤ったら危なかったな」


ドリルの雨を躱し、如意棒を伸ばして反撃する日神。


教団員1

「レベルが高すぎる...付け入る隙がない...!!」


教団員2

「邪魔になるだけだ、阿良日様の後を追うぞ!」


数十m先から教団員達が逃げようとしたその時ー


日神

「フン...!」


如意棒を大きく伸ばし、大振りで天峰に攻撃する。


天峰

「当たるかよ!」


身軽な天峰は飄々と躱すも、

日神は端から天峰など狙っていなかった。


団員3

「ぐあぁぁああ!!」


団員4

「あがあぁあ!」


日神はそのまま棒高跳びの要領で団員達の下へ移動し、

次々と団員を薙ぎ払う。


天峰

「テメェエエェエ!!!!」


日神

「五月蝿い」


天峰

「お"っ」


後ろから来る天峰を、如意棒を後ろに伸ばして喉を小突き、

流れるように団員達全員を気絶させた。


天峰

「がは"っがはっ!」


日神

「まだ気を失っていなかったか」


天峰

「バケモンがよ...! 機虎顎噛サイガーファング!」


ドガッ


あらゆるものを砕く顎で日神に噛み付こうとするも、

日神は躱して頬を如意棒で殴る。


天峰

「痛ってぇんだよ!! クソがぁあぁあああ!!!!!」


大きなメカの白虎の背中から、光の羽が生え出す。


天峰

「これでどうだ!」


ギュルルルルルウゥウゥウウン...!!!!


天峰は空高く舞い上がり、

羽の先からレーザーを照射し、日神に攻撃する。


日神

「能力無しだと少しばかり厳しいか...!」


日神はその攻撃に如意棒を伸ばして反撃する暇もなく、

防戦を強いられる。


天峰

「どうしたアギ魔隊2位がそんなもんかぁ!?」


日神

「今の俺に出来るのは...!」


日神は如意棒を投げてレーザーを打ち消しつつ天峰の下まで走り、

ビルとビルの間を壁ジャンプして上がり、

さっき投げた如意棒を空中で取った。


天峰

「読めてんだよ!」


空中の日神に向けてレーザーの照準を定める。


日神

「このくらいだ!!!」


天峰

「ぐあぁあっ!」


ギュアァア!!!!


そのビームを如意棒で弾き返して天峰に直撃させる日神。


天峰

「人間が...していい動きじゃ...ねぇだろ...!!!」


日神

「だから言っただろう...プロを舐めるな」


変身も解け、地べたに這いつくばる天峰。

そんな天峰は日神にとあるお願いをする。


天峰

「なぁ...頼む! 十祇様を...

 助けてやってくれねぇか...!!」

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